「維新」の議席数はズバリ60以上だ! 兵法三十六計で占う衆院選(中)

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「みんな」と「未来」が劣勢を挽回するには?

三つ巴の戦いの中で、日本維新の会を分析したが、これに比べ、大変なのはみんなの党と日本未来の党の新たな戦術の方向性である。

これまで自民党に必要な戦術は「勝戦計」、民主党に必要な戦術が「敵戦計」日本維新の会に必要な戦術が「攻戦計」である、とそれぞれ戦術の要諦を分析して来た。

次は4つめの混戦計だ。いわば、混戦になっている現在の選挙戦から、一歩抜け出すためのノウハウである。これは自陣の状況がかなり厳しく、上位の敵はかなり有利な状況にある場合であるから、当たり前のことをしていても駄目だと理解すべきだ。混戦を制するために、まずは党内の危機感を煽り結束を強めなければ話にもならないのである。

みんなの党は、日本維新の会との選挙協力ができなくなったわけだが、ここはいったんリセットして、新たに混戦を制するための策略や知略を「混戦計」の戦術から見つけ出さなければならない。

無論、今回の衆議院選のような状況には、すべての政党にとって「混戦計」は重要な指南書となる。だが、良いところまで来ていたみんなの党がここにきて劣勢になっているだけに、特に「混戦計」を推挙したいと思う。

まず、みんなの党のための「混戦計」から始めたい。みんなの党は「アジェンダ2012」を掲げているがこの中には、みんなの党が目指すことが全て網羅されている。しかしながら、そのアジェンダを実行するための戦術を、もう一度研究して見るべきだと直感的に思う。

なぜなら理想的なことがるる述べられているだけで、読んでいるうちに疲れてくるのだ(私の文を読んで下さって、疲れてきたかもしれないが、もう少しだ)。

真摯な姿勢は素晴らしいことだ。だが、何か「余裕がない」というか、何から何まで詰め込んでいるために息がつまってくるのだ。一般の市民はここまで望んでいるわけではない。多分、理想を追い求めているために、みんなの党の中も結構無理をしているのではなかろうか?

橋下徹氏は「すばしっこい悪ガキの雰囲気」を持っているが渡辺喜美は「親分肌のボンボンタイプ」である。お互いに主義主張が似ているので、「何とか手を組みたい」と考えたが、結局、肌合いが違いすぎると疑心暗鬼になってついつい、損得勘定も出てきたのだろうか。無論、個人的なことよりも党の将来や同志のことを考えての上である。

小沢一郎氏は死なず

「混戦計」をさらに詳しく見ていこう。まず初めは白兵戦の闘いからスタートする。

1)釜底抽薪(ふていちゅうしん)
「釜底の薪を取ってしまうと、釜の中の沸騰は収まる」ところから、敵軍の兵站や大義名分を壊して、敵の活動を抑制し、あわよくば自壊させるという作戦である。脅迫や懐柔をもって敵の内部の結束を離反させたり、相手の致命的な弱点を攻めるような闘いである。

太陽の党が日本維新の会に合流する時の計略や、未来の党の結党に至る策略には、勉強すべきところが多くある。

裏で既成政党(たとえば自民党)の人脈が、石原新太郎氏と橋下徹氏を組ませるように仕向けると、みんなの党や少数党には「よく燃える薪」がなくなり、政局はいったん静かになる。また、小沢一郎氏が亀井静香氏や河村たかし氏を嘉田由紀子新党首の元にまとめると、政局の化学反応はいったん収まる。

敵の活動の根拠を消滅させてしまうから「政界再編成」を「釜底抽薪の計」で進めたという見方ができるのだ。早い話が、敵の戦意をなくし、ジリ貧状態を作るような闘いをせよ、ということだ。

相対的にみんなの党はお行儀が良すぎて、割を食っているので日本維新の会に舐められている。選挙戦に入ったら、徹底的にネガティブキャンペーンに突入することを躊躇してはならない。

どこの党よりも早く、選挙資金も少ないのにここまで頑張って来たのだから、あらゆる手段を試すべきだ。選挙戦後半に突入する前にドブ板選挙で必死のところを見せなければ、これまでの努力が無に帰するので注意すべきだ。

2)混水摸魚(こんすいぼぎょ)
 この計略は敵の内部を混乱させ、敵の行動を誤らせたり、自分の望む行動を取らせるように仕向ける作戦である。「川に落ちた犬を棒で叩く」=趁火打劫 (ちんかだごう)が、敵の外の混乱を突くのに対して、この作戦は敵の内部の弱みをさらに混乱させて、相手のやる気をなくさせるという策略である。

9月から10月にかけ、「年末選挙の空気」が永田町を支配しているころ、民主党からの「脱走兵」が次々に第3極の政党に流れた。日本維新の会はその受け皿として機能し始めた。

一方、小沢一郎、亀井静香、河村たかしの各氏は「腐っても鯛」だとばかり、自らが新たな第3極を構成すべく策動していた。それぞれの新規政党の台所事情は厳しかったが、自民党も民主党も比較優位ではあったがやはり余裕はなかった。従って最も重大な時期にもかかわらず、混水摸魚も趁火打劫の計略も機能していなかった。

11月の解散が告げられた時に一気呵成に離合集散が始まった。普通ならその時点で泡沫政党の力を殺ぐような裏の闘いがなければならないが、与党である民主党も野党トップの自民党も手が打てないままに選挙戦に突入した。史上、稀にみる乱立選挙になったのは、誰の責任なのだろうか?

3)金蝉脱殻(きんせんだっこく)
 あたかも現在地にとどまっているように見せかけ、主力を撤退させる作戦である。

蝉が殻を脱ぎ捨てて、他所に飛んでいくが、蝉の殻が残っているからまだ敵は戦地にとまっていると思わせる計略である。今回の選挙戦の奇襲作戦はやはり小沢一郎氏と、嘉田由紀子氏の日本未来の党の結党である。

自民党も民主党も小沢一郎氏は確かに裁判で無罪になったが、「もう往年の実力は殺がれ、小沢一郎の時代はない」といったんは思ったことだろう。

国民の生活が第一も減税日本・反TPP・脱原発も結局、蝉の殻だけを残して油断させておいて、実際には「卒原発」を合言葉にして第3極の新グループをまとめたのである。選挙戦直前の焦眉の的はやはり小沢一郎氏の動きであったといわざるを得ない。この「混戦計」の計略で、日本維新の会やみんなの党の分はかなり色あせたと見るのは、私だけではないはずだ。

次ページやはり今回も「選挙の小沢」は生きていた
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