「維新」の議席数はズバリ60以上だ! 兵法三十六計で占う衆院選(中)

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橋本氏のメッキは剥げた?

もう一度言おう。「攻戦計」とは相手が一筋縄でいかない場合の作戦だ。ここにも6種類の戦術が存在する。維新の会が躍進するためには以下の定石を使えば良い。

1)打草驚蛇(だそうきょうだ)
 この戦術は草を叩いて蛇を驚かせ、外に出すことを意味する。

原義は「藪蛇」から出た言葉だが、三十六計では、これが転じて、混乱している状況の中では偵察を出して、相手の反応をまず探ると言うことである。選挙戦では維新の弱い地盤にタレント候補を出したり、弱体化している相手の地盤に人気候補をぶつけたりするケースも含まれる。東国原英夫氏や中田宏元横浜市長を受け入れたのも考えがあっての事なのだろう。

今の橋下氏の日本維新の会はまだ成熟していない。それゆえ、敵の政党の動向をもっと探るべきなのだ。身内でさえ、近づいて来る玉石混交の輩が多いように見えるが、真の仲間と合従連衡するためにも、偵察を全国に派遣するくらいの注意深さが必要である。

石原慎太郎氏という老獪な独裁者の姿を見た橋下氏は、良いレッスンを受けているのかも知れない。傍若無人だけでは全国区には通用しないから、もっと敵を知って己を知らなければならないのである。

2) 借屍還魂(しゃくしかんこん)
 これは死んだ者や他人の大義名分を持ち出して、自らの目的を達するという戦術である。

あまりにも時間がなくて太陽の党との政策協議が全くないまま、日本維新の会が選挙戦に突入したのは残念である。石原慎太郎氏のグループの立ち上がれ日本が一緒について来たため、橋下徹氏のイメージと政策にズレとブレが出て来た。橋下は妥協しない強い男らしいイメージであったのが、「橋下氏のメッキが剥げて来た」という雰囲気を女性達は見逃さない。

しかし、ちょっと待ってもらいたい。維新の会には堺屋太一氏が参謀でいるのだから、もっと「維新八策」のような知恵をもらい、大義名分を持ち出せば当面の混乱は乗り越えられるのではないのか?

また、竹中平蔵氏が維新の候補者選定委員長の任についたが、松井一郎大阪府知事と竹中平蔵氏が共同作業に入ったとのことだ。石原慎太郎氏が代表になって維新の会はなくすものもある。だが、人材の厚みが出て来て他人の大義名分と知恵を利用すれば良いのではないか?

3)調虎離山(ちょうこりざん)
 敵を本拠地から誘い出し、味方に有利な地形で戦う、という戦術である。

安倍晋三自民党総裁は橋下徹氏に対する秋波を送り続けている。竹中平蔵氏を橋下徹氏につないだのは安倍晋三氏だと言われているが、水面下では選挙後には自民党と維新の会の連携を約束する動きがある、と維新の会の関係者が言っている。

自民党総裁選の前には、敗北を見越した安倍陣営の幹部から「安倍晋三派閥の30人の議員ごと集団離党、維新と合流出来ないか」と打診して来た、との噂もある。

日本維新の会の参謀は、維新にとって有利な地盤で戦う戦術を取らなければならない。民主党から「脱走」して来た議員を利用したり、敵の地盤にタレント候補を送り込んだりして、撹乱戦術を弄することで、維新の会の票田が増えていくのである。虎を山から追い出して味方側の戦場で戦うように仕向けることが肝要だ。

橋下氏は渡辺氏との距離感をどうすべきか

4)欲擒姑縦(よくきんこしょう)
 敵をわざと逃がし、気を弛ませたところを捕らえる計略である。

今回の選挙戦では、日本維新の会は、みんなの党との協力関係がうまく行かなかった。みんなの党の渡辺喜美代表は「人ではなく政策の中身だ」と言っているが、同じ選挙区に重複して候補を送られることに不快感を示しただけの話ではないのか?

東日本はみんなの党で、西日本は日本維新の会で、と「分け合う」との事前の打ち合わせが全く機能しなくなったので、袂を分かったのではないか。

橋下氏の「最後の調整はジャンケンで決めても良い」という提案はふざけて言ったのではなくて、小異を捨てて大同につくには、そのぐらいの信頼関係を持ちたいというたとえである。

とはいえ、みんなの党は一切の企業献金を受け取らず、一年前から事務所の準備をしているから、橋下氏の意見には耳を貸す訳には行かなかったのだ。

この際、日本維新の会は、調子に乗ってみんなの党を追い詰めるべきではない。「窮鼠猫を噛む」ようになることを回避すべきだ。日本維新の会も、全ての選挙区の1区に候補者を立てる必要もなく、その力もないはずだ。「姑縱」(こしょう)とは、敵の動きを捉えながらも急迫しないことだ。

多分、自民党が勝利した後、「昨日の敵は今日の友」とノーサイド宣言をする時にこの戦術が生きてくるのである。みんなの党には江田憲司氏や浅尾慶一郎氏のような、優秀な人材がいる。無闇に敵にまわすととんだしっぺ返しにも会うかも知れないのだ。

5)抛磚引玉(ほうせいいんぎょく)

自分にとっては必要のないものを囮にし、敵をおびき寄せると云う戦術である。

日本のことわざで云えば「海老で鯛を釣る」と云うことだが、中国では「レンガを投げて宝石を取る」という意味になる。たとえば、討論をする時にわざと幼稚な意見を述べて、釣られて相手に本音を語らせるように仕向けるのである。

選挙戦後半では、分散している敵の選挙区を集中させるようにし向けたり、逆に敵の強い地盤にネガティブキャンペーンを流して応援演説の頻度を増やすように仕向けるのも、効果を発揮するだろう。

お笑い芸人を落下傘で送り込んで話題を集めておく予定の吉本興業の富山泰庸候補(実はボストン大学とオックスフォード大学の修士課程への留学経験あり)などは敵をおびき寄せるサプライズになるかも知れない。選挙は水物だから、投票所に入るまで選挙民の心はふらついているものだ。何が起こるか分からないから最後まで諦めないことである。

6)擒賊擒王(きんぞくきんおう)

敵の主力や、中心人物を捕らえることだ。敵を弱体化する戦術について応用してもらいたい。「人を射ようとするなら、まず馬を射よ。敵を捉えるためには、まず将を捕まえよ」ということである。

橋下徹氏が石原慎太郎氏を日本維新の会の代表にしたことはプラスとマイナスがあるが、総合的に見るとプラスのほうが多いように思える。

石原慎太郎氏は東京都知事で中央政界に最も影響の強い中心人物である。このサプライズが擒賊擒王の戦術に影響してくるのだ。

一方、立ち上がれのメンバーが維新に合流したことに異論がある向きもいるが、いざ選挙戦になれば「ロートル」といっても、転んでもただでは起きない経験豊富なメンバーでもある。たとえば平沼赳夫氏は元首相候補だし、与謝野馨、園田博之、藤井孝男、中川義雄の4氏などは地方に行けば新参者の維新の会メンバーよりもよほど知名度は高い。

迷走する選挙戦では猫の手も借りたいことになるだろう。従って、日本維新の会にとっては石原慎太郎氏という求心力のある中心人物を党の顔としたことで、新しい歴史が始まったと言っても過言ではない。 結局、日本維新の会は、今の流れで行くと現有議席の「9」から「60」以上になると予想する。

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