東大美女との「相席旅行企画」が炎上したワケ HKT48「(女の子は)おバカでいい」から考える

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講義でも強調したのですが、参加した女子学生に罪はありません。タダでロンドンまで行けるバイトをラッキーと思うのは当たり前でしょう。今回の広告の出され方は、当事者への確認を少し欠いていたようで、その点は不満だったようですが、「女性性を売りにしているのはわかっている」と彼女ははっきり言いました。

女性性を売りにして、何が悪いのか

そういう彼女の主体性を否定してはいけないはずです。ジャニーズはすべて男性性を売りにしているのでしょうし、男性のアナウンサーにも外見のセレクションは間違いなくかかっています。「ホステスみたいで低俗」というネット上の批判に対しては、「ホステスを蔑視した低俗な批判」と答えました。当事者が合意しているのですから、セクハラでないことは自明です。だとすれば、何が問題なのでしょうか。

「東大に入ってまで、外見で選別されると思うとつらい」という女子学生。その気持ちはよくわかりますし、そこが当事者の合意を越えて炎上したポイントでもあります。女性のみが、どんなにほかで達成をしても、外見を求められるからです。

ネット上の東大卒女性からは「ケンブリッジやオックスフォードの美女図鑑なんてあるか? そういうチャラい東大女子に説教してやりたい」といった内容の声もありました。ひとつだけ反論をするとすれば、そんな「チャラい東大女子」というのは、経験上ほとんど存在しません。

入学者の2割に届くかどうかという彼女らは、どう見ても平均的には男子学生より真面目で、試験でもよくできます。私に連絡をくれた美女図鑑の学生さんも、1~2年生時の試験の平均点がものすごく高い人でした。相当勉強したのだと思います。少数派の東大女子の内部でチャラいだのチャラくないだので対立が起きてしまうのは、外部の男性視線を媒介とした無用の対立のように思えてなりません。

「これが東大ではなく、○○大学美女だったら」「これが東大美女ではなく、東大生(もしくはイケメン東大生)だったら」。たくさん来た感想でした。確かにこれほどの騒ぎにはならなかったでしょう。だとすると、その中の感想にあったように、「『東大女子』なるものに対する世間のイメージが問題の根幹にあり、それに振り回されたのではないか」というのが、さしあたりの結論なのかもしれません。

それは現代の日本社会で、勉強のできる女性、特に東大女子に課せられた過剰な負荷だと言ってよいでしょう。HKT48を叩いて、「賢くて何が悪い!」と言えたのに、そして「可愛いことも大切」と認めてもらえたのに、当人の責ではないバッシングを受ける「美女」たちや、「外見を磨かなければ認められないの?」と世間の圧力を体感する東大女子を見ていると、気の毒になります。女性で勉強ができる、なんて、男性がそうであるのと同様に、特別なことではないはずなのに。

瀬地山 角 東京大学教授

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せちやま かく

1963年生まれ、奈良県出身。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、学術博士。北海道大学文学部助手などを経て、2008年より現職。専門はジェンダー論、主な著書に『お笑いジェンダー論』『東アジアの家父長制』(いずれも勁草書房)など。

「イクメン」という言葉などない頃から、職場の保育所に子ども2人を送り迎えし、夕食の支度も担当。専門は男女の社会的性差や差別を扱うジェンダー論という分野で、研究と実践の両立を標榜している。アメリカでは父娘家庭も経験した。

大学で開く講義は履修者が400人を超える人気講義。大学だけでなく、北海道から沖縄まで「子道具」を連れて講演をする「口から出稼ぎ」も仕事の一部。爆笑の起きる講演で人気がある。 
 

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