上野千鶴子さん「もっと戦略的に生きなさい」 “フェミバージン”の若い女性たちに伝えたい
「家事分担をお金で解決する」の落とし穴
――女性活躍を巡り、家事労働移民の受け入れも話題になっています。高学歴・高収入の女性は、夫を地道に説得して家事育児をやってもらうより、外国人に助けてもらうほうがいい、と考えることも多いです。ただ、これは国内の男女格差をグローバルな経済格差に付け替えるだけで、本質的な解決とは思えないのですが……。
そのとおりですね。目の前にいる男を変えようとせず、途上国の貧しい女に、お金の力を使って面倒なことを押し付ける発想は、まさに新自由主義(市場主義)だと思います。
想像してみてほしいのだけど、もし、世帯年収が2000万円くらいあって、その1割を使えばフルタイムの家事労働者(移民)を雇えるとしたら……もう、ためらう理由はないと思います。つまり、市場主義者の高収入カップルにとっては、夫の家事分担を増やすより、移民に頼ったほうが合理的。女性側は、家庭内の男女平等なんていう面倒なことを求めて夫に家事分担を期待するより、お金で解決しようと考える。私がネオリベ女性に問題を感じるのは、まさにこの点です。
EPAで日本に来ている、インドネシア人を取材したことがあります。彼女の月給は20万円で、いろいろ引かれて手取りは16万円。半分を本国に送金して、月8万円で生活しています。どうやって8万円で暮らすのだろう、と思うかもしれませんが、彼女たちはワンルームマンションを2人でシェアし、弁当を作り、自転車で通勤していました。
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