上野千鶴子さん「もっと戦略的に生きなさい」 “フェミバージン”の若い女性たちに伝えたい

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上野千鶴子さん、女性活用はお金で解決するのでいいのでしょうか?
妊娠・出産で会社を辞めざるをえなくなる、育休から復帰後は会社に居場所がない、夫が家事育児を手伝ってくれず心身ともに追い詰められる――。結婚・妊娠・出産といったライフイベントによる生活の変化に苦しむ女性は多いものです。「男女平等は当たり前」と言われて育ってきたいまの20~30代の中には、そこで初めて自分が「女」だったと気づく人も少なくないのではないでしょうか。
日本のフェミニズムを引っ張り続ける上野千鶴子さん(東京大学名誉教授)は、現実に苦しむ女性たちに向けて、これまで大事な言葉をたくさん発信してきました。前編記事に続き、新著『上野千鶴子のサバイバル語録』でも紹介された過去の名言を振り返りつつ、「女性活用と移民受け入れ」などいま話題のテーマについても聞きました。
※前編記事:上野千鶴子さん、なぜ「女」は辛いのですか?

「家事分担をお金で解決する」の落とし穴

――女性活躍を巡り、家事労働移民の受け入れも話題になっています。高学歴・高収入の女性は、夫を地道に説得して家事育児をやってもらうより、外国人に助けてもらうほうがいい、と考えることも多いです。ただ、これは国内の男女格差をグローバルな経済格差に付け替えるだけで、本質的な解決とは思えないのですが……。

そのとおりですね。目の前にいる男を変えようとせず、途上国の貧しい女に、お金の力を使って面倒なことを押し付ける発想は、まさに新自由主義(市場主義)だと思います。

想像してみてほしいのだけど、もし、世帯年収が2000万円くらいあって、その1割を使えばフルタイムの家事労働者(移民)を雇えるとしたら……もう、ためらう理由はないと思います。つまり、市場主義者の高収入カップルにとっては、夫の家事分担を増やすより、移民に頼ったほうが合理的。女性側は、家庭内の男女平等なんていう面倒なことを求めて夫に家事分担を期待するより、お金で解決しようと考える。私がネオリベ女性に問題を感じるのは、まさにこの点です。

EPAで日本に来ている、インドネシア人を取材したことがあります。彼女の月給は20万円で、いろいろ引かれて手取りは16万円。半分を本国に送金して、月8万円で生活しています。どうやって8万円で暮らすのだろう、と思うかもしれませんが、彼女たちはワンルームマンションを2人でシェアし、弁当を作り、自転車で通勤していました。

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