上野千鶴子さん「もっと戦略的に生きなさい」 “フェミバージン”の若い女性たちに伝えたい
インターネット以前から、マスメディア、ミドルメディア、ミニメディアと、媒体別に自分のキャラを演じ分けてきた。だから、違う媒体で私が書いたものを読んだ人は「上野千鶴子」っていう、同姓同名の人が何人かいると思っていたんじゃないかしら。
きっと私は、編集者にとって使い勝手のいい人材だったと思う。締切は守るし、本の販促も仕事だと思って最大限協力するしね。だって、本は商品だもの。
こういう風に考えるようになったのは、私が失業経験を持っているから、だと思います。読者は自分の懐からお金を出し、自分の時間を使って本を買って読んでくれる。ありがたいことです。「読んでよかった」と思ってもらいたい。おかげさまで、編集者からも「次も一緒に仕事をしたい」と思ってもらえるようです。よい編集者は、産婆さんみたいなもので、よい作品を産みだす大きな助けになってくれます。
若い世代の女性たちに伝えたいこと
私は子どもを産んでないし、育てたこともないのだけれど、目の前で学生が、竹が皮を破ってバリバリと音をたてるように育っていくのを見る。親も見られない場面を、教師だから見ていられる。なんていい職業かと思います。
――上野さんの次を担う人は育っていますか? 若い世代のフェミニストにメッセージがあればお願いします。
筋を通すことと、芸を持つこと。2つを意識してほしいです。筋を通す、というのは、ネオリベ的な女性活用にだまされないでほしい、ということ。何を求めて何のために声を上げるのか、よく考えて。そして、筋の通った主張を、たくさんの人に届けることにも、スキルを磨いてもらいたい。多くの人に届けるためには、何を伝えるかだけではなく、どう伝えるかの芸も、必要だと思う。
それから、バイリンガルとして上手に生き抜く術も身につけてほしい。学生にはいつも言っていました。大学の上野ゼミは性差別にあふれた男性社会のなかでは、治外法権の「出島」「租界地」「異文化」みたいなもの。
一歩外に出ると、性差別や偏見があふれています。フェミぎらいな人も少なくない。フェミニズム原理主義者になると、そういう社会で生きていくのがつらくなる。だから、フェミニストには、バイリンガルになって、外の世界でも生きていけるようになってほしい。
よく「どうしたら、上野さんみたいに強くなれますか」って、若い人から聞かれるけれど、私だって最初から強かったわけじゃあない。打たれて、あるときは跳ね返し、別のときはかわしたり、しくじったりしながら、学習と経験から、強くなったのだから。
(撮影:今井康一)
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