そんなこともあって、2012年夏に楽天が発売したカナダ発の「Kobo(コボ)」には、大いに期待した。日本の出版関係者もかなりの期待を寄せたと思う。しかし、すでに明らかなように、発売直後からコボは迷走を続け、いまやユーザーは見向きもしなくなった。
「ギター譜1曲も電子書籍1冊」「画像1枚が1冊」「Wikipediaも1冊」としてまでタイトル数を増やしていく姿勢自体に、大きな疑問符がついた。
キンドルがこうした難点をすべてクリアしていれば、今度こそ「電子書籍専用端末の墓場」行きは免れるかもしれない。では、キンドルには、日本で大ブレークする力があるのだろうか?
キンドルが、これまで日本で発売された電子書籍専用端末と決定的に違うのは、3G回線が無料で利用できることと、ネット通販の会員を大量に持っていることの2点だろう。それ以外、たとえば、日本語書籍のタイトル数、価格などは、これまでの日本の電子書店とほぼ変わらない。
ただ、前述した2点は、これまでの日本の端末にはなかったことだけに、売れると見る向きが多い。値段も当初は8480円として楽天のコボより500円高くしたが、11月7日に突如500円引き下げて7980円とした(現在のコボは6980円)。サービスを比較すれば、利口なユーザーはキンドルを買うだろう。なにしろ、「コボイーブックストア」はいまだにコボでしか読めないのだ。
もちろん、日本メーカーの端末、たとえばソニーの「リーダー」などは、キンドル上陸の影響をもろに受けると見られている。ソニーの「リーダー」はなぜかいまだに「iOS」に未対応である。それに値段も高い。ソニーがこうなら、ほかのメーカーの端末はほぼ壊滅すると見て間違いない。実際、私もそう思っている。
中規模書店にも劣る品揃え
しかし、だからといって、キンドルがそれほど売れるとは思えない。というのは、アマゾンですら、日本で電子出版が進まない「壁」を越えられていないからだ。
日本の電子出版には「超えられない壁」がいくつか存在する。そのことを私は新著『出版・新聞 絶望未来』の中で詳しく述べたが、最大の壁は、タイトル数の少なさだ。
たとえば、最大手の講談社は、今回のキンドルにも大量のコンテンツを提供している。講談社では、今年から紙と電子の同時発売を掲げ、社内の組織も出版のフローも整えた。しかし、それでも、電子化は毎月平均100冊という。
となると、集英社、小学館、角川、文藝春秋、新潮社など有力出版社が毎月提供できるコンテンツは、現状では合計して1000タイトルに満たないだろう。つまり、新刊に関しては、アマゾンに限らず、どの電子書店も今後、劇的にタイトル数を増やしていくことはほぼ不可能である。
実際、今回のアマゾンのタイトル数も5万点越えがやっとだった。
その中には、名作などの無料の日本語書籍1万タイトル以上が含まれ、合計1万5000を超える漫画タイトルも入っている。これでは、中規模のリアル書店にも品ぞろえで負けてしまう。
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