佐藤優(下)「歴史と国際政治の教養を磨け」

あなたの会社の混乱と、国際政治は関連している

次の大混乱は16世紀。それを引き起こしたのは、スペインとポルトガルの世界制覇だ。ポルトガル人が日本に到達して、鉄砲を持ってくると同時に、キリスト教というグローバル基準の宗教を持ってきた。これに対してどう対応するかで国が割れた。

佐藤勝 佐藤優(さとう・まさる)
作家、元外務省主任分析官

1960年、東京都生まれ。85年に同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。在英国日本国大使館、在ロシア連邦日本国大使館に勤務した後、本省国際情報局分析第一課において、主任分析官として対ロシア外交の最前線で活躍。2002年、背任と偽計業務妨害容疑で東京地検特捜部に逮捕される。09年に最高裁で有罪が確定し、外務省を失職。『国家の罠』で毎日出版文化賞特別賞受賞。『自壊する帝国』で新潮ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション賞受賞。『獄中記』『交渉術』など著書多数。最新刊『読書の技法』が12万部突破

織田信長がグローバルな流れに入っていこうとしたのに対して、明智光秀、豊臣秀吉、徳川家康らは天皇との関係を重視し、キリスト教に対してネガティブな態度をとった。鉄砲などの技術的なものは取り入れる一方で、キリスト教(カトリシズム)というドクトリンは取り入れなかった。そして鎖国の方向へ向かっていった。

こうして江戸時代の安定した状況が続いたが、幕末に再び混乱が生じた。その背景にあったのは、アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、オランダによる帝国主義だ。こうした国々が、清帝国の衰えによって生まれた空白を狙い、東アジアでも露骨に植民地獲得に走り始めた。

グローバル化の圧力によって、アウタルキー(自給自足の経済)を維持できなくなった日本は、新しいシステムへの適応を目指した。そして、近代化に成功した日本には、憲法ができ、普通選挙ができ、2大政党制までできた。

それが1930年代になって再び混乱する。原因はナチスの台頭だ。ナチスやイタリアのファシズムは、これまでの国際法秩序を一方的に覆そうとして、日本もその流れに乗ろうとした。

帝国として再編する中国

つまり、歴史を振り返ってもわかるように、日本に大きな混乱が起きるときには、必ず世界秩序の大きな変化が起きている。そして今起きている大変化には、2つの震源地がある。

1カ所は中国だ。現在の中国は、帝国として再編をすると同時に、民族形成(ネーション・ビルディング)を始めている。この2つが同時進行するのは、かつてなかった形態だ。強いて言えば、ハプスブルク帝国に似ている。

これまでの中国は、共産党の中央委員会に対して忠誠を誓っていればいいという、プレモダンな帝国だった。均質なネーションではなかったし、農民が中心になって動かない状態にあった。当時は、文字言語を通じてのコミュニケーションはできたけれども、中国人同士でも口語では意思疎通が必ずしもできなかった。

その状況が産業化によって変わった。

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