佐藤優(下)「歴史と国際政治の教養を磨け」

あなたの会社の混乱と、国際政治は関連している

産業化は、民族形成と近代化とパッケージになっている。産業化に伴い、同じ文字言語を話す人たちが出てくることによって、中華帝国における「漢人」とは異なる、「中国人」という国民が生まれつつある。しかも、ネーションが形成されるには、必ず敵のイメージが必要になる。その敵のイメージが日本になってしまっている。

ナショナリズムが形成されて、ネーションビルディングが行われる過程においては、自分たちの代表者によって自分たちは統治されるという、「自己統治の原則」が必ず出てくる。それは民主的な普通選挙と関係してくる。

しかし、中国では普通選挙が保証されておらず、今も国家指導部は共産党の密室の中で選ばれている。これは絶対に持たないと思う。中国ぐらいのGDPがあって、1人当たりGDPにしても日本の10分の1はある国で、今のような略奪や焼き打ちが起きるというのは、異常な現象だ。

ほかに、合理的に考えて明らかに意味がない航空母艦を作るのも理解できない。第7世代の戦闘機が出てくれば、こんなもの単なる標的にしかならない。それから近隣諸国との領土問題も深刻化している。日本だけではなく、フィリピン、ベトナムなど周辺国との関係がすべて悪化している。

なぜこうしたことが起きているのか。それは中国人自身にもわからない。何かに対して怒っていることは間違いないが、何に対して怒っているのかがよくわからない。

突然眠りから覚めた龍が、何かわからないけれど怒って尻尾を振り回して、あっちこっちが迷惑しているという状況だ。世界はどうやって中国と付き合ったらいいかがわからなくなっている。だからこそ、「中国とどう付き合うか」が、今の政治の大きな軸の一つになっている。

もう一つの震源地はイラン

もう一つの震源地はイランだ。イランはペルシャ帝国の再建し、世界帝国になろうとしている。その背景には、シーア派による支配という論理と、核を保有しているということがある。イランも、中国と同じように、帝国を形成していくプロセスにおいて、国際社会の既存のゲームのルールを一方的に破壊し、自己に有利なものに変えようとしている。

こうした状況下で、世界的な規模の混乱が起きている。その混乱の中で日本の政治の混乱があり、日本の経済の混乱が起きている。企業にとって、中国ビジネス抜きの企業戦略は考えられないし、中東抜きのエネルギー戦略は考えられない。

中国、イランで大きな動きが起きている一方で、アメリカも岐路に来ている。

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