福島原発事故での不作為認めた東電

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東電が今回、自らの不作為を踏み込んで認めたのは、より深い反省と改革の意志を見せることで、できるだけ早期の柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働を狙ったものと考えられる。

原発を再稼働するには、原子力規制委員会が来年7月までに策定する新たな安全基準を満たすだけでなく、地元自治体や住民の理解が必要と見られる。柏崎刈羽原発の地元・新潟県の泉田裕彦知事は、再稼働は福島の事故原因の徹底検証が前提との姿勢を崩しておらず、福島事故後の社内テレビ会議映像の全面公開も求めている。泉田知事は10月21日の新潟知事選で3選を目指している。

7月に出された国会事故調査委員会報告書でも歴代の東電経営陣の意図的な先送り、不作為を構造的要因と挙げており、同じく7月に提出された政府事故調査・検証委員会の報告書では「東京電力は、事故から1年以上が経過した現時点においてもなお、事故原因について徹底的に解明して再発防止に役立てようとする姿勢が十分とは言えない」と批判していた。

東電としては、このまま自己弁護していれば再稼働の時期はますます遅れるとの危機感を強め、国会・政府事故調が指摘した問題点を追認する形で、自らの不作為を認めたものと思われる。ただ、自発的ではなく、後追いで小出しのような形で責任を認めることは、事故原因究明への熱意が欠如しているとの印象を強める可能性もある。

東電では、福島事故の背後要因の分析について、「さらなる深掘りを実施していく」としている。だが、その本気度はまだまだ見極めがつかないのが現状だ。また、東電の原子力改革特別タスクフォースを監視・監督し、東電取締役会へ提言する役割を持つという、原子力改革監視委員会の実効性も問われる。

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