民法でも公序良俗に反する場合、権利濫用がある場合、未成年者との契約の場合等の例外を置いていますが、原則どのような内容の契約を締結するかは当事者同士に委ねられています。
しかし、それを労働契約にそのまま当てはめてしまうと、会社と労働者の力関係が対等でないことから、劣悪な労働条件での雇用が可能になってしまいます。そのため、労働法は労働者保護の立場から、民法の「契約自由の原則」に修正を加えています。
法的に言えば、民法は一般法、労働法は特別法で、一般法と特別法が抵触する場合は特別法が優先されます。ただ、労働法という名前は総称で、「労働基準法」「労働組合法」「労働契約法」「男女雇用機会均等法」「労働者派遣法」「雇用保険法」「最低賃金法」など様々な労働法が存在しています。
労働三法というと「労働基準法」「労働組合法」「労働関係調整法」を指しますが、「労働組合法」「労働関係調整法」は労働組合と使用者の関係を規律する集団的労働関係法であるため、近年は個別的労働関係法として「労働契約法」(2008年3月1日施行)等の重要性が高まっています。
最低賃金を下回る契約は無効
さて、先ほどの時給800円で働くという契約について考えてみましょう。この契約が有効かどうかは、どの地域で働くかによって変わってきます。居住地ではなく、実際の勤務地がどこかということになります。「地域別最低賃金」は都道府県ごとに定められ、毎年10月頃に改訂されます。
現在、東京都の907円を筆頭に、神奈川県905円、大阪府850円、埼玉県と愛知県820円、千葉県817円、京都府807円となっています。最低賃金額が800円以下の都道府県で働く場合は、時給800円は有効ですが、もし801円以上の場合はその部分が無効となり、最低賃金と同様の契約をしたことになります。
最低賃金法4条2項では「最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金額に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、最低賃金と同様の定めをしたものとみなす」と規定されています。
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