「就活応援の無料タクシーチケット配布しております!」
3月下旬に東京のビッグサイトで開催された就活生向け合同就職セミナーの会場入口で、黄色い法被(はっぴ)を身にまとった東京ハイヤー・タクシー協会のスタッフが、訪れる就活生にチケットを渡していた。
配っていたのは、同協会が就職活動中の大学生向けに作成したタクシーの初乗り運賃(730円相当)が無料になるチケット。同協会に所属する約3万台のタクシーで利用でき、初乗り以上の距離を走った場合は残りの差額分を自己負担すればいい。会社訪問や面接などに向かう際など、就職活動での利用を想定している。
同協会ではこのチケットを、東京ビッグサイトや立川で開催される「リクナビ2017LIVE」会場で配布。6月1日の採用選考解禁日には東京駅八重洲口のタクシー乗り場でも配布を予定している。今回、1万枚の無料チケットを作成、最後の1枚がなくなるまで積極的に配りたいという。同協会の藤原廣彦副会長は「配る機会を作らないと受け取ってもらえない。そして無料チケットを使ってくれる人が多ければ多いほどいい」と語る。
就活生応援のためとはいえ、かなりの大判振る舞い。もちろん、これにはタクシー業界の深謀遠慮がある。それは、若者の深刻なタクシー離れへの対策だ。
「タクシーに乗ったことない!」
大手タクシー会社の数社では、数年前から人材不足を補うために新卒のドライバー採用を始めている。入社した新入社員に対して調査をしたところ、これまでタクシーに乗った経験がないという人がほとんどだったという。
この状況は数字にも顕著に表われている。同協会では、タクシー利用者を対象にしたアンケートを実施しているが、回答者の年齢分布を見ると20歳代からの回答はわずかに6.2%。日本の人口に占める20歳代の人口比率(1割程度)と比較しても、低い数値だ。「現場の感覚としても、確かに若者はほとんど乗っていない」(藤原副会長)ようだ。
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