さらに、米国の自動技術学会(SAE)では無人車の可能性を指摘し、この状態の完全自動運転をレベル5と定義している。
フルモデルチェンジされた新型Eクラス
ここで新型Eクラスのプロフィールを紹介しよう。ボディは全長が長くなったが、幅は1852mmと旧型から3mm狭くなった。最近の新型車のフルモデルチェンジで幅が狭くなった例は稀だ。だが、新設計のボディ技術によりキャビンはむしろ広がっているという。一方、全長は4923mmと53mm長くなっている。これには「直列6気筒のディーゼルエンジンを搭載する布石ではないか」との噂が出ている。メルセデスはノーコメントであったが、その噂は間違いないだろう。また、アルミや超抗力鋼板などの新素材を使うことで、衝突安全性能と車体剛性を大幅に進化させながらも、50kgのダイエットに成功している。
パワートレーンに関しては、新開発の2リッターディーゼルがまずデビューしている。従来の2.2リッターに代わる新世代ディーゼルで、どこが新しいかというと、実走行での排ガス性能だ。VWのディーゼルスキャンダル以降、世界中でRDE(リアル・ドライブ・エミッション)が話題となっている。つい最近、日本でも市販のディーゼル車のモード走行以外の排ガス性能が公表された。違法性の指摘はなかったが、マツダ以外のディーゼル車は多くの排ガスを出していたことが問題となった。
メルセデスはこの問題に2012年ころから取り組み、新しいディーゼルを開発していた。そのエンジンが今回新型Eクラスで搭載された2リッターディーゼルである。詳しくは別の機会に譲るが、このディーゼルはモード走行以外でもNOx(窒素酸化物)やPM(ススの原因となる燃えカス)を極力抑えてくれる。
先進的な車体とディーゼルエンジン。これだけでも魅力的だが、Eクラスの自動運転は最上級の「Sクラス」よりも進んだシステムを搭載している。筆者は「テスラ『モデルS』の進化が映す自動車の未来」(3月8日配信)ではテスラのモデルSの自動車線変更をレポートしたが、メルセデスのEクラスはそれを上回る進化を実現した。
メルセデスの開発担当者によれば、ウインカーを操作するだけで、自動で車線変更する「自動追い越し機能付ディストロニック」(アウトバーン・パイロット)は当面はドイツだけ認可されている。なぜなら、欧州にはR79(国連規則79番)という自動操舵を規制する法律があり、速度10km/h以上では自動操舵が認められず、自動運転普及の障壁になっている。現在は日欧の政府関係者がこの規制をどう緩和するのか、WP29(国際基準調和会議)のサブワーキングで議論している最中である。
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