米国の自動運転、ネックは「ボロボロな道路」 車線認識も難しい劣悪な道路網が普及阻む
ボルボ北米法人のレックス・カーシーメーカーズ最高経営責任者(CEO)は、ロサンゼルス市での自動車ショーでのプレスイベントで、同社が試作した半自律走行車がきちんと路上を走れないことに憤慨していた。彼は近くにいたロスのガルセッティ市長に、不満をぶちまけた。「車線が識別できない。分かるように、ちゃんとラインを引き直してくれませんかね」。
舗装道路のうち300万マイル(約480万キロ)が劣悪な状態にあるという米国のインフラ事情が、自動運転の実現を阻む足かせとなっている。車線表示はかすれ、信号や照明もきちんと機能していないことが多い。他の先進国では統一されているのが普通の信号機や車線表示の形式も、地域によって千差万別なのだ。
国内道路の65%までが悲惨な状態
米運輸省の推計によると、国内の道路のうち65%がひどい状態。世界経済フォーラムによる2014〜2015年の国際競争力レポートによれば、米国の交通インフラの世界ランキングは12位だ。マッキンゼー・グローバル・インスティテュート(MGI)の調査では、過去20年間に米国が交通インフラに投じた額は欧州連合(EU)の3分の1弱と、中国の6分の1に過ぎない。
テスラのイーロン・マスクCEOも最近、同社セダン向けの自動運転システムを発表した際にロサンゼルスの高速道路の惨状を示すビデオを公表。米国の車線表示の現状は「クレージー」で、半自律走行車を戸惑わせていると不満を示した。「カリフォルニアにはもっとまともな車線表示が本当に必要だ。これがドイツや日本や中国であれば、ちゃんとしている」。
こうした状況下で自動運転を実現しようとすれば、メーカーは時間とコストをかけ、センサーやマップの性能を向上させねばならない。 日中にちゃんとした道を走っていれば車は自分の位置をきちんと識別できるが、夜間や悪天候の中で車線表示が不明な道を通る場合は、そうではないからだ。