ドイツと比べて、日本の場合は少し複雑で、R79 の技術要件(速度10km/h制限)は今年7月1月から適用される予定だ。テスラは規制適用以前に自動操舵を申請したので認可されたが、7月1日からR79が運用されると、メルセデスの新型Eクラスに搭載される自動車線変更には認可が下りない可能性が出てくる。テスラよりも後で登場するEクラスが認可されない「ねじれ状態」にどう対応するのだろうか?
日本の道路交通法では、どう解釈される?
日本政府の考えはこうだ。国連ではR79の速度10km/h制限を解除するか、あるいは平成30年1月をめどに同基準の改正版を発行する予定なので、日本政府はそれまでの間はドライバーがオーバーライドできることを前提として、速度10km/h制限に関する規準の適用を猶予することを決定した。これにより、7月以降もテスラ同様、自動車線変更の申請に認可が下りる。法律的には、新型Eクラスも日本で自動車線変更が可能となるのだ。
もう一つの論点はドライバーがハンドルから手を離してもいいかどうかだ。日本は昨年東京モーターショーで自動運転の走行実験をするために、ハンドルから手を離しても道交法上は違反とならない旨のガイドラインを明らかにしている。つまり、ハンドオフはOKなのだ。
だが、欧州はハンドオフを認めていない。メルセデスはウインカーを出せば、ハンドルを握っていなくても自動で車線変更できるが、ルール上はハンドルから手を離してはいけない。ハンドルから手が離れると10~15秒後にはアラームが点灯する。そこで新型Eクラスからは警告を数回無視すると、自動的に速度を低下させ、最終的にはハザードが点灯して自動で緊急停止する機能が付与された。
この機能はルール違反のときにだけ働くのではない。高速道路を走っていてドライバーが意識を失った場合でも有効だ。メルセデスはあえてそう呼んでいないが、実態はデッドマンシステムなのである。技術部門の副社長であるウェーバー博士は「近い将来はデジタルマップがあると、安全な場所まで自動で誘導できるだろう」と述べている。2020年くらいまでには、こうした機能が整うと、安心して使えるシステムに進化するだろう。
車線維持や車線変更はレーンのマーキング(白線)が前提となるが、それが消えているような道ではどうするのか。メルセデスのシステムは前を走るクルマを追従することで仮想のレーンを想定する。また、新しいインテリアデザインは高度なドライバー・アシストに不可欠なHMI(ヒューマン・マシン・インターフェイス)も熟慮されたうえで開発されている。ハイテクこそ人間研究が必要というメルセデスの哲学を実践していた。
こうして完全な自動運転の一歩手前にいる高度なドライバー・アシスト・システムは新型Eクラスから実用化され、日本では夏ごろに市販される予定だ。そのときは世界でもっとも進んだシステムとなるに違いない。この分野のトップランナーを走っているのは間違いなくメルセデスではないだろうか。
(写真:Mercedes-Benz Cars press photo)
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