ベンツはなぜここまで日本で強くなったのか 15年ぶり輸入車首位奪還の意味を読み解く
排ガス不正問題をきっかけとして急ブレーキを強いられるフォルクスワーゲン(VW)グループをよそに、メルセデス・ベンツが日本市場で絶好調だ。お金持ちだけが手にできる「高級車」とされるブランドの代表格であるにもかかわらず、今年の年間ブランド別輸入車販売台数は、昨年まで15年間首位の座に君臨していていたVWを抜いて、念願のトップ奪還が確実な情勢にある。
「高いのに売れる」その強さの源は、いったいどこにあるのだろう? VWの自滅を抜きにしても、これは一朝一夕に起きた動きではなく、背景にある歴史を理解しておかなければならない。順を追って説明していこう。
第二次大戦後の日本では、1955~1960年にかけて乗用車に対する外貨予算割当が厳しく制限された結果、ほぼ輸入車は絶滅(年販総数1000台未満)した経緯があり、その後も1960年代までは関税が40%という保護貿易のため、ようやく年間販売台数が2万台を超えるのは1970年代に入ってからだった。
この時代の外車絶滅状態を辛うじて生き延びたのは、メルセデス、VW、キャデラック、シボレーなど、ほとんどは当時自動車輸入の第一人者であったヤナセと代理店契約のあるブランドだった。ヤナセは戦前からの経験や国内外要人とのコネクションにより、輸入車を日本に適合させるノウハウに長け、かつ、高級車にふさわしい顧客も多く抱えていた。
輝かしきブランドの「降臨」が拡販のカギ
そんな中、日本を1973年の第一次オイルショックが襲い、燃費の悪い米国車が突然敬遠され始める。アウディもBMWもまだ高級ブランドとしてはよちよち歩きだった時代に、メルセデスは俄然、高級車ナンバーワンの地位を独占することに成功したのだ。
とはいうものの、当時のメルセデスが手掛けるのはアッパーミドルクラスの今でいう「Eクラス」が下限で、「Sクラス」を主役とする超高級ブランドであった。この頃のSクラスはライバルとの比較でも高嶺の花で、1980年代になっても、たとえばBMW 「733i」の車両価格が日本では887万円で売られているところ、エンジン出力が同等のベンツ「380SEL」は同1254万円もしたという記録が残っている。
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