松下幸之助は初対面での第一声が特別だった

初めて会った日に何を語ったか?

松下は、公の人として自分の責任を自覚し、遂行する意志を持っていた(撮影:高橋 孫一郎)

「きみのお父さんは、いくつや。お母さんは元気か」

大きな机の向こう側から身を乗りだすようにして、初対面の松下幸之助は私に話しかけてきた。

PHP研究所の秘書として採用するかどうかの、最終面接であった。笑顔が実にやさしかった。いくつかの簡単な質問をしたあと、最後に松下は微笑みながら言った。

「きみ、2年間だけでええんや、わしのそばで勉強せえへんか」

松下通信工業から異動

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それまでこの異動の話を断ろうと考えていた私は、思わず「はい、お願いします」と返事をしていた。この人の下で働くのは、いい経験になる。2年間だけならやってみてもいい、と思った。

正直なところ、当時はPHP研究所の存在を知らなかった。横浜の松下電器の通信工業にいた私は、若かったからより多くの体験を積みたいと思い「1度、別の職場に移りたい」という希望は出していたけれど、PHP研究所に行きたいということは、その存在すら知らなかったほどであるから、希望の埒外であった。だから、PHP研究所への異動の可能性があると上司から聞かされたときは、不安に包まれた。

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