松下幸之助は初対面での第一声が特別だった 初めて会った日に何を語ったか?

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後になって私には、松下という人が、そのような第一印象からだけではなく、人間性というか、その人間的本質そのものがやさしく、温かい人であるのだとわかったけれど、しかし、第一印象のおかげで、私は最初からずいぶんと楽な気分で、松下に楽しく接することができたのである。

とはいえ、23年間というのは決して短い時間ではない。いや、私は今でもなにごとにつけて松下の真似をし、なにか問題が起きたときには「松下ならどうするだろうか」と考える。私の心のなかでは、今でも松下が生きている。

松下は「公の人」だった

その23年間、側にいるのが嫌だなとか、辛いと思ったことは正直言って一度もなかった。松下は常に私にとって偉大であり、かつ尊敬すべき存在であり、人間としての目標であった。それは、松下が「公の人」だったからである。私欲よりも、会社のために尽くす、社会のために尽くす、国家のために尽くす、人類のために尽くす。その思いがなによりも先行する人であった。側にいてそのことが明確に感じ取れた。自分のことよりも公に尽くそうとする人物に、尊敬の念を抱かざる人間がいるだろうか。

公の人であるからこそ、松下は人を感動させ、人を魅きつけることができた。そして経営者として、あるいは指導者として成功することができた。松下は、公の人として自分の責任を自覚していた。

責任を自覚し、遂行する意志を持つか持たないか。指導者の指導者たる所以は、まさにそこにある。今日世間であの人は偉いと尊敬されている人たちはみな、それぞれ責任感を持った人たちである。キリストは人間全体のために十字架にかかった。私たちが、それは自分の責任ではないと思うことも、キリストはそれを自分の責任と感じたのである。

世上の混乱を見て、これを救うことは自分の責任であると考えたのである。私たちは、キリストのような偉人ではないけれど、少なくとも自分のしている仕事に対しては、責任をはっきり自覚しなければならない。責任の自覚というものがない場合には、指導者は指導者でなくなる。単なる傍観者であると言っておきたい。

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