今年2月の第10回大会もレース終盤の落ち込みが激しかった。2時間5分台を狙い、3人のペースメーカーがレースを誘導して、30kmの通過は1時間29分51秒。その後、2時間4分台の自己ベストを持つフェイサ・リレサ(エチオピア)とディクソン・チェンバ(ケニア)が30~35kmの14分31秒で突っ走り、世界トップクラスのスパートを見せた。しかし、35~40kmの5kmは15分34秒とペースダウン。優勝タイムは2時間6分56秒と期待はずれに終わった。
ベルリン、ロンドン、シカゴ、ドバイ、ロッテルダムなどで、2時間2~4分台の好タイムが生まれているが、東京マラソンの大会記録は、ディクソン・チュンバ(ケニア)の2時間5分42秒。海外招待選手の顔ぶれから考えると物足りないタイムだ。
それがアップダウンと風に悩まされていた湾岸エリアのコースがなくなることで、35km以降のペースアップが可能になる。日本国内最高記録(2時間5分18秒)の更新はもちろん、2時間3~4分台の期待も十分でてくるわけだ。
東京マラソンは賞金だけでなく、タイムボーナスがある。今年でいえば、優勝賞金は1100万円、2位が400万円、3位が200万円で、10位(10万円)まで支払われる。タイムボーナスは、世界記録(男子は2時間2分57秒)が3000万円、日本記録(男子は2時間6分16秒)が500万円、ゲームレコード(男子は2時間5分42秒)が300万円だ。
従来コースでは、東京で「世界記録」という雰囲気はなかったものの、好タイムが連発するようになれば、“一攫千金”を狙う世界中の猛者たちが東京に集まるようになる。自然とレベルがあがり、ますますタイムが出やすくなっていく。
低迷する日本勢が海外まで出かけることなく、世界最高峰のレースに挑戦できるのもメリットだ。ハイペースをうまく活用できるレベルの選手が現れれば、東京で日本記録(2時間6分16秒)の更新が現実になるだろう。好タイムがバンバン出ると、そのニュースは世界を駆け巡り、「東京マラソン」というレースの価値がグングンと上がっていく。世界中のランナーが注目するだけでなく、協賛している企業にとっても喜ばしい。世界中でトピックスとなるような「好タイム」が誕生することで、さまざまな相乗効果を生むわけだ。
市民ランナーにとってもうれしいコース
次は「大会の付加価値」について。筆者は東京マラソンに2度出場しているが、新宿、品川、浅草、銀座は大観衆の歓声があり、走っていて本当に気持ちがよかった。だが、36km付近の佃大橋くらいから沿道の人数がガクッと減り、ずいぶん寂しいなと感じた記憶がある。マラソンは終盤がいちばんきついのに、そこでの声援が少ないからだ。
新コースでは、応援の少ない湾岸エリア(移動手段が乏しく観衆が集まりにくい)がなくなり、新たに走る両国~門前仲町は、東京の歴史を感じさせる町並みで、その景観も従来コースよりずっといい。そして、フィニッシュエリアが何より魅惑的だ。最後はれんが造りの東京駅を背景にレースを終えることができるのだから。
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