新iPadPro、使って分かった「実力」と「限界」 「パソコンからの置き換え」は簡単ではない

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アップルは3月21日にiPad Proを紹介する際、「6億台ともいわれる5年以上たったパソコンからの買い換えを狙う」との目論見も披露した。iPad Pro 9.7インチによってノートパソコンを置き換えることが可能、と考えているのだ。

これには賛否があるが、筆者は現段階では「限りなく否に近い」考え方を持っている。というのも、どのような用途でパソコンが用いられているのかについて精査しないまま、「置き換えられる」といわれても大雑把すぎるからだ。

Windowsでしかできないことがある

いくつか利用例を考えてみよう。筆者は普段、MacBook Pro 15インチモデルを使っている。このMacをiPadに置き換えられるか考えてみると、例えば、今この原稿をiPad ProとSmart Key-boardで書いている通り、原稿執筆の手段としては代替可能だ。

筆者は普段、MarkDown対応のUlyssesというエディタを使っている。ほぼプレーンなテキストを、iCloudなどに保存していく、テキスト向けのワークステーションのようなアプリだ。このUlyssesはiPad向けにもリリースされており、Macで書いていたすべてのテキストに、iPadからアクセスできた。

このUlyssesのテキストを、Word形式で書き出し、OneDrive経由で共有して各メディアに共有リンクの形で送っているが、iPad Pro上でも全く同じフローで原稿を送ることができた。

Evernoteで音声メモ付きでインタビューやイベントの取材を行った際でも、iOS 9で搭載された画面分割の機能を使えば、Evernoteのメモを右端に表示させながら、Ulyssesで原稿を書き進めることもできる。これも、Macでの使い勝手をiPad Pro 9.7インチが再現してくれた。

次に、筆者の手元にあるWindows PC、ASUS EeeBook 205TAだ。こちらは11.6インチのディスプレイ、Atom 1.33GHz、メモリ2GB、eMMC 32GBという仕様で3万円前後という価格が魅力だ。iPad Proは完全にこの手のサブノートPCの性能を上回っており、キーボードの打ちやすさまで含めて、EeeBookに勝っているといえる。

しかし、筆者がこのパソコンを持っているのには、明確な理由がある。この低価格パソコンは、金融機関のオンラインサービスにアクセスするためのものなのだ。金融機関のオンラインサービスを使用するには、Windows PCを持っている必要があるのだ。そのため、iPad Pro 9.7インチで代替することはできない。壊れない限り、5年以上買い換えず使っていくことになるだろう。

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