新iPadPro、使って分かった「実力」と「限界」 「パソコンからの置き換え」は簡単ではない

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おそらく読者の皆さんにも様々な「パソコンの使い方」があると思う。それらの理由すべてが、「代替できない理由」になる。例えば、ペン入力デバイスのApple Pencilは魅力的だが、普段使っているグラフィックスアプリがiPadになければ役に立たない。あるいは業務に利用するソフトウェアがiPadになければダメだろうし、Windowsにしか用意されていないゲームをやりたい場合にも代替は無理だろう。

Microsoft Officeが使用できること、そして100万を超えるアプリがあることにより、かなり多くの用途がiPadから行えるようになったことは、間違いない。しかし、人々が「すべてこれで済ませられる」という安心感とともに環境を移行するのであれば、まだまだ足りない部分がある。

購入するかしないか、決める目安は?

では、iPad Pro 9.7インチを購入するべきかどうか、どのように決めればいいのだろうか。筆者が提案したいのは「トータルの使用時間に占める比率」だ。現在、パソコンを1日4時間使っているとして、そのうち2時間以上(5割以上)をiPad Pro 9.7インチがこなすことができるのだとすれば、いま手に入れても十分にペイすると思う。

小さい上に軽いiPad Pro9.7インチ版。ノートパソコンとの比較では、こうした外形的な長所も魅力的だ

一般的なパソコンを凌駕している点も多い。iPad Proのパワフルさは、ビデオ編集や音声編集で非常に魅力的だ。iPad ProでのiMovieでのビデオ編集は、滞りを待ちながらの作業となる筆者の5年目のMacBook Proから、完全にその地位を奪ってしまった。

またセルラーモデルなら単体で高速インターネットが利用でき、10時間のバッテリー持続時間を、SmartKeyboardと合わせても500g程度の軽さで実現してくれる。大幅に軽量化されたカバンは、肩や腰への負担も軽減するだろう。

iPad Proは、現段階では、自らの意思でワークフローを移行できる、もしくは新たに作り上げることができる、「プロ」のためのマシンといえるかもしれない。しかし今後、だんだんと、メインマシンとしての地位を築いていくこともまた、予見することができるのだ。
 

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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