【前田新造氏・講演】“人”が創る企業力−組織を活かすリーダーシップ−(中編)

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東洋経済新報社主催フォーラム
「逆境こそチャンス~未来を創るリーダーの要件~」より
講師:株式会社資生堂 代表取締役社長 前田新造

前編からの続き)

●売り上げや販売数量というノルマを撤廃

 メガブランドの導入により資生堂が変わったということを表す一方で、販売第一線側の改革にも取りかかりました。その柱がお客さまとの接点から企業価値を高める、店頭からの改革です。100%お客さま志向の会社に生まれ変わるという改革を進めるに当たって、グループの中で圧倒的多数を占める約1万名のビューティコンサルタントの力を借りることにしました。これだけの人々が活動にかかわれば一気に会社全体が変わる。そして何より後戻りできなくなる。お客さまの絶大なる信頼こそ会社の重要な資産です。その信頼を決定付けるのは、何といっても資生堂の代表として店頭でお客さまに直接接するビューティコンサルタントなのです。

 ビューティコンサルタントはその名前の通り、「お客さまに美しくなっていただくお手伝いをすることがミッションである」と入社時から徹底的に教育をされております。しかし、現実は与えられた日々の売り上げ目標の達成や、推奨品の販売実績が彼女たちの評価の大部分を占め、常に追い詰められている。お客さまを美しくする仕事がしたくて入社したのに、毎日ノルマに追いかけられ、理想と現実の間に板挟みになっている。100%お客さま志向の会社に生まれ変わるために改革を進めるのであれば、お客さまとの接点での活動が真っ先に変わらなければならない。そこで社長就任と同時に直轄のプロジェクトを立ち上げ、4カ月で解決策をまとめ、構築した具体的アクションを全国13会場を回って多くのビューティコンサルタントに私の言葉でしっかりと伝え、意見交換をしました。中でも最も注力したのがビューティコンサルタントの評価で大きなウェイトを占めていた売り上げや推奨品の販売数量というノルマを撤廃し、その代わりに「応対したお客さまから評価していただく」という新たな仕組み作りです。お客さまの満足を追求するこの活動一点を目指すならばビューティコンサルタントの評価は一体誰がなすべきか?答えは明快です。お客さまです。社内では、評価から売り上げを無くすと売り上げが下がるのではないか、ビューティコンサルタントが怠けるのではないかなどの異論も出ましたが、私は「ビューティコンサルタント本来の活動に徹してもらうためには、一時的に売り上げが下がろうと結構だ、この活動に徹すれば数年後には余りあるものとして返ってくるはず」として考えを曲げませんでした。

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