【前田新造氏・講演】“人”が創る企業力−組織を活かすリーダーシップ−(中編)

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 あるお客さまのご意見として「店頭でメーキャップ実習をしてくれたのはうれしかったけれど、照明が暗くてよく分からなかった」といったような言葉が寄せられました。もしこのお客さまが再び来店されたときに電灯が明るく改善されていたらどうお感じになるでしょうか。その反応は想像に難くありません。一方で相変わらず照明が暗い状況であったとしたらお客さまの心は離れてしまいます。この仕組みは私たちが日々見過ごしているものへの気付きを与えてくれる大切な活動として定着しつつあります。このようにお客さまの声を大切にする地道な活動こそ100%お客さま志向に向けての活動と言えます。

 2005年からの3年間、一旦会社を壊して創り直す覚悟でさまざまな改革を進めて来ました。休むことなく打ち出す改革プランに社員は少しの遅れもなくよく付いてきてくれたと思っております。おかげさまで3年間、各年次の計画を上回る実績を達成することができました。この実績よりも社員がやればできるとの自信を取り戻したことが大変大きな成果であったと考えております。

▲資生堂社員にお客様の声を伝えるハガキ
社員の評価にもつながるハガキは導入2年半で153万通を越え、「ありがたいことに返送いただいたハガキの6割以上に、丁寧なコメントが書き入れてくださっていた」という。

●お客さまの最高の美しさを実現し、心まで豊かになっていただくこと

 この状況もようやくグローバル企業の仲間入りをする入口のところに立てた段階であるというのが現実です。私は2008年度から取り組む新たな3カ年を前にして、社内ではまず長期のビジョンを検討することから始めました。10年先の資生堂のあるべき姿の議論です。その姿を目指した時に、改革の第2フェーズとなるこれからの3カ年で私たちは何を目指すのか、そしてそのゴールに向かって具体的に何を実現しなくてはならないのか。今までのやり方に従い、3カ年計画という中期計画を立てることだけに固執してしまうとどうしてもこれまでの延長線上でしか物事を考えられず、遠大なビジョンより実現可能な目標を重視してしまいます。しかし10年先を考えるとなると、時代の底にある潮流をしっかりと見極めて新たな発想のもとに構造的な議論を行なうこととなり、進むべき方向がよりはっきりすることになります。

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