”既得権益”崩壊は、マスコミ人の働き方をどう変えるか?《若手記者・スタンフォード留学記 38》
実際のところ、普段の生活でも新聞を読んでいる学生を見かけることはまれです。
今、滞在しているスタンフォードの学生寮には、約125人が住んでいますが、毎朝、玄関に配られてくる新聞は、5、6部程度。去年住んでいた寮も、約128人の住民に対し、5,6部程度。つまり、ざっくり推計すると、新聞を購読しているスタンフォードの学生は、3%ぐらいしかいないのです。
日本でも、新聞を購読している若者にはめったに出会わないですので、時がたつにつれ、新聞全体の部数はさらに落ち込むでしょう。
ただ、日本とアメリカのメディア業界には大きな違いもあります。
まず、新聞の場合、地方紙が乱立するアメリカに比べて、日本の新聞社は一つの企業の部数・売上高が大きい。ですので、生産・販売面の合理化と人件費の削減さえ行えば、生き残ることはできると思います。
加えて、日本の場合、解雇規制が厳しく、マスコミ業界の労働組合の力が強い。よって、日米では、ちょっと衰退のサイクルが変わってくるでしょう。
大まかに言うと、アメリカの場合、メディア企業は、「収入減少(テレビは広告収入、雑誌・新聞は広告+販売収入) → 人員削減 → クオリティ低下 → さらに収入減少」という負のサイクルにはまっています。
一方、日本の大手メディア企業の場合、「収入低下 → 正社員の待遇悪化 → 人材の流出 → クオリティ低下 → さらに収入減少」という、違った形の衰退サイクルに入る可能性が高いでしょう。
こうした既存メディアの衰退は何をもたらすのでしょうか? プラスとマイナスのどちらが大きいのでしょうか?
私は、日本全体の利益を考えた場合、プラスの影響のほうがきっと大きいと思います。
ジャーナリストの働き方は3つに分かれていく
カギとなるのは、”正社員の待遇悪化”と”技術革新によるコスト低下”の2つです。
この2つの変化により、これから、ジャーナリストの働き方が大きく変わっていくでしょう。これまで、「待遇の良い正社員」「待遇の悪い契約社員・フリー」の2つに分かれていたのが、以下の3つのタイプに分かれていくのではないでしょうか。