”既得権益”崩壊は、マスコミ人の働き方をどう変えるか?《若手記者・スタンフォード留学記 38》

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 ポイントとなるのは、「リスクとリターンのバランス」と「個々の適性・専門・野望」の2つです。

(1)サラリーマン型 -- 社員記者・編集者・ディレクターなど 

<リスクとリターンの関係>
 現在:ローリスク・ハイリターン → 将来:ローリスク・ローリターン

<特徴>
 安定性を好む人や、組織の力を使って、個人ではできない大規模な取材・作成をしたい人に向いている。将来的に、メディア企業の経営にかかわりたい人にもお勧め。

このカテゴリーは、言うまでもなく、これまで最も恵まれてきた働き方です。

「組織の論理にがんじがらめになる」というデメリットはありますが、終身雇用で、(大手メディアの場合)給料も世間より良いのですから、待遇面では抜群です。一言で言えば、「ローリスク・ハイリターン」。たとえると、利回りが10%ある日本国債みたいなものです(もちろん、そんなローリスク・ハイリターンの商品は現実の金融市場には存在しません)。

ただし、このハイリターンの部分が、これから年々、削られていきます。金銭面や福利厚生、さらに、社会的なステータスという点でも、うまみが薄れていくわけです。リスクが低いのですから、リターンが削られるのは、当然です。今までが異常だったのです。

さらに、個人としての自由度が低い。当然、やりたくない仕事をやらされることもあるでしょうし、ローテーションが盛んな企業では、何の専門性も磨けません。さらに、自分の意見を打ち出す自由も制限されます。

たとえば、NHKでは、中立を期すため、ジャーナリストの主張を際だたせた番組はつくりにくいでしょう。海外でも、英『エコノミスト』誌は、雑誌の主張を一貫させるため、あえて記事を無記名にしています。つまり、個人として、自分を売り出したい人には、あまり向かない働き方です。

しかし、だからと言って、大手メディアの社員として働くことの魅力がなくなるわけではありません。

まず、雇用の安定性が高い。終身雇用の社員記者となれば、労働組合に強く守られ、首にされることはないですし、(待遇が悪化したとしても)世間並みの安定した生活が送られる。

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