「職場だけ夫婦別姓」で妥協する、女性の心理 ずっと事実婚だった私は、こう考えてきた

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仕方なく会社のゴム印を2種類作るようにオーダーしたら、けげんな顔をされて、改めて通称名を貫く難しさを感じました。銀行の代表名やビジネス用クレジットカードの氏名、税務書類やクライアントとの契約書に記載するのは戸籍上の名前、名刺やホームページ上、あるいは電話やメールで名乗るのは旧姓ですから、自分でも「あれ、堂薗で記名してオッケーだっけ?」と混乱してしまうこともあります。で、書類を書き間違えたりすると、「あーあ、不便!」と舌うち。「旧姓を使って仕事したいんだから仕方ないか」とため息をつきながら書類を書き直すしかありません。

転職して旧姓が使えなくなった、と言っている友人もいましたから、提出する履歴書や転職サイトへの登録は戸籍上で行い、内定してから「通称名の使用」を願い出る、というのが通常なのでしょう。正直、「仕事上くらい、スムースに同じ名前を使わせてくれよ~」と思います。

同じ姓だと「家族」に所属している感は出る

一方で、夫と同じ姓になることで「家族」としての意識、何かに所属している安心感みたいなものが生まれたのも事実ですし、実際にどうかは別として、法律上、家族としての立場が守られているような気分もあります。

私だって、思春期の頃は、好きな人の名字の下に自分の名前を書いてみてうっとりしたこともあるわけですから、入籍して改めて「結婚したんだなー」という気分も味わいました。子どもができてからは、子どもの銀行口座を作ったり役所に書類を出したり、医療費の控除申請するときも「ご関係は?」と聞かれなくて済み、「家族」であることを証明する必要がないのは便利だと感じます。まぁ形から入るタイプの私は、「母」「妻」としての自分と、「仕事人」としての自分を切り替えるのに、名前を使い分けられるのもまたいいなぁと今は思っています。「芸名」「屋号」があるみたいな?(笑)

私の経験を書き連ねましたが、「夫婦別姓」が認められていない現状では、入籍して名前が変わる女性が97%なのだそうです。「結婚と同時に名前が変わる」ことに関する戸惑いを感じるとしたら、ほとんど女性の側といっていいと思います。

働き続けることを前提にすると、旧姓でも新しい名前でもどちらにもいろいろなメリットや不便があります。メリットや不便は、生き方や価値観によってそれぞれに感じることですから、「これが正解です」と断定するのは難しいでしょう。職場にいる既婚女性たちに、具体的な感覚を聞いてみながら「自分だったらどう思うかな」とてんびんにかけて決めるしかないでしょうね。

そのうえで、「自立して仕事をする人」としてあなたが職場で旧姓を使い続ける選択をしたとしても、夫になる人や両親には具体的に何か迷惑をかけるわけでもないのだから、「こうするわ」と伝えておくだけでいいのではないでしょうか。

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