現在、私が学ぶケネディスクールは年間300の授業を開く。そのうち人気が高いために入札にかかった授業数は約10分の1だった。
たとえば私の場合、秋と春の学期に希望した授業のうち、計3つがビディング対象となってしまった。たとえば秋学期に登録した「政策、政治のための書き方入門」では、授業登録した人数は履修枠の倍。集計当日には、点数が大きかった順から選ばれ、授業を受ける権利を手にする。
過去10年にもわたって公表している入札結果を見ると、人気の授業と先生が一目でわかる。リーダーシップや交渉術など、ケネディスクールが得意とする分野で、かつ名物教授や講師になるほど入札になる可能性は高くなる。
受講者の数を絞るのはさまざまな理由がある。討論ベースの授業ではあまりにも受講者が多いと収拾がつかなくなるし、スピーチや交渉術のような模擬演習が中心の授業では学生が多すぎると演習にかける時間が少なくなる、といった理由からだ。
白熱する、教授による授業内容のプレゼン大会
面白いのは入札システムだけではない。実はビディングの締め切り時点では、実際の授業はまだ始まっていない。いったい学生たちはどうやって、どの授業に貴重なポイントを投じるかを決めているのか。
そのひとつが、教授が授業について説明するプレゼンだ。
入札で投じるポイント決めの締め切り前週。キャンパスを訪れると、各教室では受講を検討する学生を前に、教授や講師が自らの授業をアピールしていた。
「私の授業を取れば、あなたが事業を起こすときの計画づくりに役立つ。ハーバードで催すピッチコンテスト(起業家が事業計画を投資家にアピールする場)に備え、この授業を使う学生もいる」
「ワシントンDCで政治コンサルタントして主に政治家にスピーチの方法を指導してきました。話し方や声の出し方から、感動を誘う話の組み立て方まで授業では教えます」
朝の8時45分から夕方5時半まで丸1日を費やすプレゼン大会は2日にわたって開かれ、「ショッピングデー」と呼ばれる。
「ショッピング」というのはウインドーショッピングを表す買い物のこと。教える側が自分の授業を買ってもらおうと、学生たちに売り込む日だ。
教授は授業の概要を説明するシラバスを配り、授業のテーマから、成績のつけ方、宿題の内容などを説明する。プレゼンに失敗し、印象が悪ければ受講者は少なくなる。ショッピングデーは教える側に与えられた、授業を存分にアピールできる貴重な時間である。
一方の学生側には当日の印象以外に、教授や講師、授業を知るもうひとつの手がかりがある。過去の授業の評価だ。