多文化、多言語主義に世界の「未来」がある 世界銀行総裁から若い人たちへのメッセージ

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2030年までに世界から貧困撲滅を目指すチャレンジングな取り組みを続ける世界銀行のキム総裁(撮影:今井康一)
世界を見渡すと、テロの深刻化や紛争の激化、難民の急増など地政学リスクは高まるばかりだ。世界経済も米連邦準備制度理事会による9年半ぶりの利上げを受けて、牽引役だった新興国を中心に不透明感が懸念される。排外主義が国家間にはびこる中で、世界は「寛容と協調」の結束を強め安定を取り戻せるのか。危機の根因のひとつである貧困の削減に長年取り組んできた世界銀行のジム・ヨン・キム総裁に聞いた。

世界には最貧困層が7億人もいる

──2030年の貧困撲滅に向けて、世銀は長年にわたりチャレンジングな取り組みを続けてきました。2015年には世界の最貧困層(1日1.90ドル未満で暮らす)の数が世界人口の10%を下回る(2012年は12.8%)見通しです。貧困率低減に効果的だった施策とは。

世銀では3つの施策にコミットしてきた。1つ目は経済成長を推進させ多くの雇用を創出すること。最貧困層が最も多いアフリカにおいては、エネルギーへのアクセスと農業の生産性向上に力を入れている。2つ目は人材への投資で、特に医療・保健と教育への投資です。3つ目は確実に社会保障とか保護を与えること。具体的には、貧困者が直接受けられる「条件付き現金支給」です。条件とは、現金を支給するから子どもを学校に送りなさい、あるいは十分に栄養のある食事を子どもに取らせなさい、ということです。

カンボジアのゴミ投棄場で廃品を回収する子どもたち。数百人の子どもが働いている © Masaru Goto / World Bank

中でも、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC、国民皆保険)を実現し、誰もが平等に医療サービスが受けられるようにすることが極度の貧困を撲滅する上で重要です。

この5年、10年でヘルスケア、医療は経済成長にとっても有効だということがわかってきました。ヘルスケアの投資収益は10対1。1ドルをヘルスケアに投資をすると10倍の見返りがある。生産性の向上や経済成長にもつながるため、UHC実現が不可欠なのです。

日本は1961年にUHCを達成して以降、知識と資金、人材面で世銀のUHC普及に貢献してきた。ぜひ、全員に必要なときに負担可能な費用で基礎的な保健医療サービスが受けられるようにしたい。子どもの早死やパンデミックの悲劇から全世界を守れるのです。この15年だけで10億人が貧困から脱却した。2030年までに残りの7億人にいかに手を差し伸べるかが大きな課題です。

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