多文化、多言語主義に世界の「未来」がある 世界銀行総裁から若い人たちへのメッセージ
世界には最貧困層が7億人もいる
──2030年の貧困撲滅に向けて、世銀は長年にわたりチャレンジングな取り組みを続けてきました。2015年には世界の最貧困層(1日1.90ドル未満で暮らす)の数が世界人口の10%を下回る(2012年は12.8%)見通しです。貧困率低減に効果的だった施策とは。
世銀では3つの施策にコミットしてきた。1つ目は経済成長を推進させ多くの雇用を創出すること。最貧困層が最も多いアフリカにおいては、エネルギーへのアクセスと農業の生産性向上に力を入れている。2つ目は人材への投資で、特に医療・保健と教育への投資です。3つ目は確実に社会保障とか保護を与えること。具体的には、貧困者が直接受けられる「条件付き現金支給」です。条件とは、現金を支給するから子どもを学校に送りなさい、あるいは十分に栄養のある食事を子どもに取らせなさい、ということです。
中でも、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC、国民皆保険)を実現し、誰もが平等に医療サービスが受けられるようにすることが極度の貧困を撲滅する上で重要です。
この5年、10年でヘルスケア、医療は経済成長にとっても有効だということがわかってきました。ヘルスケアの投資収益は10対1。1ドルをヘルスケアに投資をすると10倍の見返りがある。生産性の向上や経済成長にもつながるため、UHC実現が不可欠なのです。
日本は1961年にUHCを達成して以降、知識と資金、人材面で世銀のUHC普及に貢献してきた。ぜひ、全員に必要なときに負担可能な費用で基礎的な保健医療サービスが受けられるようにしたい。子どもの早死やパンデミックの悲劇から全世界を守れるのです。この15年だけで10億人が貧困から脱却した。2030年までに残りの7億人にいかに手を差し伸べるかが大きな課題です。
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