多文化、多言語主義に世界の「未来」がある 世界銀行総裁から若い人たちへのメッセージ

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ジム・ヨン・キム(Jim Yong Kim)/2012年7月1日、世界銀行グループの第12代総裁に就任。内科医であり人類学者。20年以上にわたり、世界中の恵まれない人々の暮らしを良くするため、国際開発協力に献身的にかかわってきた。前職はダートマス大学総長。また、パートナーズ・イン・ヘルス(PIH)共同創設者。元世界保健機関(WHO)HIV/エイズ部長。1959年、韓国ソウル生まれ。5歳で家族と共に渡米し、アイオワ州マスカティンで育った。1982年にブラウン大学を優秀な成績(マグナ・クム・ラウディ)で卒業。1991年に医学博士号、1993年に人類学博士号を、いずれもハーバード大学にて取得。小児科医であるヨンスク・リム夫人との間に2人の息子がいる(撮影:今井康一)

排外的な考えが各国に広がっている今、国際間の協調がうまく取れるのでしょうか。リスクや脆弱性への排除に向け、世銀は各国にどのように呼び掛けていきますか。

わたし自身も経済難民でした。1964年に一家で韓国から米国に渡った。当時、韓国は1人当たりのGDPがガーナやソマリアより低かった。米国が難民をオープンに受け入れてくれたおかげです。われわれは各国に、オープンなマインドを持ってくださいと呼びかけています。

また、協調性をもってリスク分析をしないといけない。紛争や脆弱性に対して、なぜテロが起こるのかをシェアしないといけない。状況がひどくなるまで待つのではなく、協力し合って問題に介入していく。今までは国や国際機関が縦割りでやってきましたが、さまざまな組織や団体と融合して分野横断的に取り組んだほうが、紛争や難民、パンデミックに対応できるのです。

──世界が内向きになっていく中で、若い人たちに世界情勢に対する関心が薄れてきているように思えます。彼らにメッセージはありますか。

寛容を求める声が足りない

現時点でも紛争が起こっている。お互いに非難の応酬が続いています。過激派によるテロがひどくなり、一方で排外主義、内向きになって人種差別主義者になっていく。そうすると、両陣営ともどんどん過激化してしまう。今はまだまだ平和を求める声が足りない。寛容を求める声が足りない。世界はお互いに共存していかないといけないのです。多文化、多言語主義に未来があると、若い人には言いたい。

持続可能な地球に生きることができるのか、地球上の気温上昇を抑えられるのか、もっと繁栄を享受できる社会に暮らしていけるのか、これらは若い人に決定権がある。放っておくことで持続可能な社会は作れない。ぜひ未来は自分で切り開いてほしい。

未来を切り開くにはまず世界を眺めることです。解決しないとならない問題があるのなら、自分の世代に影響するので対処しないといけない。海外を見て、できるだけ多くの外国を学んで世界を理解することです。自分との考えの違いを知り関心を持つ。その上で自分の見解をしっかりと打ち立てる。それを怠ると、世界は大変な事態に陥ってしまいます。

鈴木 雅幸 東洋経済 記者

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すずき まさゆき / Masayuki Suzuki
2001年東洋経済新報社入社。2005年『週刊東洋経済』副編集長を経て、2008年7月~2010年9月、2012年4月~9月に同誌編集長を務めた。2012年10月証券部長、2013年10月メディア編集部長、2014年10月会社四季報編集部長。2015年10月デジタルメディア局東洋経済オンライン編集部長(編集局次長兼務)。2016年10月編集局長。2019年1月会社四季報センター長、2020年10月から報道センター長。
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