ついに、賃金労働者の4割が非正規になった――。11月4日に厚生労働省が発表した、「就業形態の多様化に関する総合実態調査」にショッキングな数字が踊った。パートや派遣など、いわゆる「非正社員」が占める割合が、初めて全体の40%に達したのだ。1990年には20%だった(総務省「労働力調査」)ことを考えると、25年間で実に倍増である。
ネット上では、「アベノミクスがこうした事態を招いた」「これでは1億総活躍どころか、1億総貧困社会だ」といった悲観的な反応が多い。朝日新聞も、11月5日付朝刊で「高齢世代が定年を迎えて正社員が減るなか、人件費を抑えたい企業が非正社員で労働力を補っている実態が浮き彫りになった」と報じている。
しかし、実態を分析すれば、これらの見方は偏っている。どういうことだろうか。
率を押し上げた背景に、高年齢者雇用安定法の存在
使用者側の代理人として労働問題を扱う倉重公太朗弁護士は「『企業が人件費節約のために、さらに非正規を多く用いている』というのは、誤りなのではないか」と指摘する。率の増大を招いた大きな要因として考えられるのは、2013年4月1日に施行された、改正高年齢者雇用安定法だ。
急速な高齢化の進行や、2013年から厚生年金の受給開始年齢が引き上げられたことに対応し、定年後に年金も給料も受け取れない人が増えることを防ぐ目的で作られた。もともと、全体の8割近くの企業は、継続雇用制度を整備し、希望者を定年後も雇用していたが、その対象者は労使協定の基準を満たす人などに限っていて、一定程度の絞り込みがされていた。
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