学生はなぜ「ブラックバイト」にはまるのか 労働法に守られた権利を認識せよ
年の瀬の風物詩、クリスマスケーキ販売のアルバイト。大学生の鹿野史郎さん(20、仮名)は働いている店から「販売目標100個」のノルマを課された。頑張って何とか97個まで売ったが、3個だけ残ってしまった。翌月渡された給与明細を見ると、売れ残り分が1個500円換算で時給から天引きされていた――。
フィクションだが、現実に似たような話は起こっている。断っておくが、これは完全に違法である。アルバイトに買い取る義務は全くないし、もし給与から差し引かれた場合は全額請求できる。
長時間労働などの過酷な労働環境、待遇に見合わない過重な責任や過大なノルマ――。学生アルバイトにもかかわらず、学業に支障をきたすほどの働き方を強いられる学生が社会問題化している。最近は「ブラックバイト」と称されている。
7割の学生が不当な扱いを経験
NPOや弁護士がつくる市民団体「ブラック企業対策プロジェクト」の調査によれば、アルバイト経験のある大学生の約2500人のうち、「残業代が払われない」「罰金を求められる」「セクハラ・パワハラがひどい」「納得いかない理由でクビにされた」などの不当な扱いに、約7割が直面したことがあるという。
学生はなぜブラックバイトにはまるのか。そこには構造上の問題が隠れている。
大学生をはじめとする学生が、親からの仕送りに加えて学費、生活費などの足しにするためにアルバイトをして収入を得ることは、昔から行われてきた。しかし、近年はそのありようが変質してきているとの指摘がなされている。というのも親の年収低下をはじめ経済状況の悪化によって、金銭面で困窮している学生が増加している。
もちろん、昔から「苦学生」とよばれる貧乏な学生はいたはずだが、現代の学生が置かれている社会状況は、非正規雇用の増大など雇用環境の悪化や子どもの貧困と格差の広がりなど、従来とは質的に異なる。学生アルバイトをしなければ学業を続けられない学生が増え、その弱みにつけこんでアルバイトにもかかわらず過酷な労働を強いるようなケースが後を絶たないのだ。
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