ハーバードを白熱教室にする「超競争原理」 教授たちは赤裸々に"評価"されている

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彼らは学生からの質問を受け付けるオフィスアワーという時間を毎週設けるうえ、受講者からの問い合わせや注文など、何でも屋として雑務を一手に引き受ける。特にTFは補習などを担当することで、自らが教授となる将来のキャリアに備え、教える技術、教材の作成方法、議論のさばき方、学生への対応方法などの訓練を重ねる。

TF、CAはクラスの規模によって人数が変わる。1クラスにつき最低1人、多ければ約10人もの補助役を設けることで、教授や講師は教えるという行為に集中できるという利点がある。

学生の「学ぶ意欲」に応える仕組みがある

また学ぶ意欲があれば、どんどん難しい授業を取ることができるのもハーバードのいい点だ。大学院の授業であっても、先生の許可さえ得られれば学部生も履修できる。意欲の高い学生はどんどん発言するし、授業の雰囲気づくりに貢献する。「出る杭を打つ」のではなく、「出る杭をうまく生かす」が実践されている。

ショッピングデーでのプレゼン、授業評価、入札、TF・CAの協力、モチベーションの高い学生集めなどを経て繰り広げられるケネディスクールの授業。驚いたのは最後の授業には、全学生が立ち上がり拍手の嵐が巻きおこる点だ。

日本では授業に拍手するなど考えられなかったが、ハーバードにいると面白い授業には自然と拍手を送りたくなる。また教授や講師の地道な努力を目の当たりにすると、心から応援したくなる。大げさに相手を褒めるという米国の文化がそうさせているのかもしれないが、秋学期に履修した4つのうち3つの授業でスタンディングオベーションを体験した。

留学前の新聞記者時代、日本のある国立大学の教授を取材し、こんな会話をした覚えがある。取材がひととおり終わり、帰りの新幹線まで時間が余ったため雑談をしていた。その時に「先生、研究と授業のバランスをどうやって取っているのですか?」と聞いた。

すると「授業に力は入れないよ。力を入れて学生が質問に来たら研究に差し支えるから。教授にとって授業に力を入れないのがいちばんの方法」という言葉を聞き、残念な気持ちになった。

日本でもやる気のある先生はいるし、ハーバードにもモチベーションが低い教授、面白くない授業も当然ある。そして、どれだけ熱心な先生でも人間である限り、さぼりたい時もあるし、やる気の出ない時もあるだろう。

しかしハーバードにはそういった教授や講師が学生から悪い“通知表”を突き付けられるという「競争原理」に基づいた仕組みがある。そしてすばらしい先生は、入札などで高く評価されるという制度もある。

教育という大学が提供するサービスの質を維持する点で、ハーバードには健全な仕掛けがあるといえそうだ。

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