「体温上げて万病予防」は、間違った発想だ そもそも「免疫力の強さ」ってどう測るの?

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たとえば、食事の内容で体温が上がったり下がったりすることはありえます。体を温める漢方薬や食品は確かにありますが、ただ公表されているデータによれば、いずれも短時間の効果しか認められておらず、平熱まで上げる効果があるかどうかは不明です。

では百歩譲って、何らかの方法で平熱を少し上げることができたとしましょう。そこで次に考えるべきは、「平熱が高い人のほうが免疫力も高いのか」という点です。

確かに、風邪をひいたときなどには、体を温かくしていたほうが症状も早く治るような気がします。また高齢になるほど平熱が低くなり、かつ肺炎などの病気にかかりやすくなるのも事実です。とはいえ、これらは複合的な要因によって起こる結果であり、平熱が低いことが風邪や肺炎の直接的原因になっているわけではありません。

最適な免疫力が、すでに備わっている

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そもそも論として、「免疫力」を正しく測る方法はまだ存在しません。「血液中のリンパ球を測る検査法」を提唱している人たちもいますが、免疫システムは非常に複雑で、簡単な血液検査だけで測れるようなものでは、決してないのです。

測る方法がなければ、「免疫力が上がった」とか「下がった」とかは言えないでしょう。つまり、この類の健康法には科学的根拠が示されておらず、正しいとも、間違っているとも言えないということになります。

われわれの体の免疫システムは、生命を維持するために欠かせないものです。もしこの機能が働いていなければ、ちょっと風邪をひいたり、ケガをしたりするだけでたちまち命を落としてしまうことになりかねません。

人間は過去、悠久の時間をかけて、この複雑な免疫システムを育んできました。だからこそ人類は、絶えることなく現代に命をつないでいるわけです。であるなら、われわれの体には、地球環境に合わせた最適な免疫力が、すでに備わっていると考えるべきです。

むしろ人によっては、その免疫力が高くなりすぎて、花粉症などのアレルギー反応や自己免疫疾患を引き起こしているとも言われています。

こうした点を考慮すると、免疫力は「人間が簡単には死なずに済む仕掛け」というくらいにとらえるのがいいのかもしれません。皆さんも「免疫力アップ」などの言葉に振り回されることなく、自然に逆らわない生き方をすることこそを大切にしてみてはいかがでしょうか。

体温を上げると体の免疫力が高まる?→ △

 

岡田 正彦 新潟大学名誉教授、医学博士

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おかだ まさひこ / Masahiko Okada

新潟大学名誉教授、医学博士。現・水野介護老人保健施設長。1946年京都府に生まれる。1972年新潟大学医学部卒業、1990年より同大学医学部教授。1981年新潟日報文化賞、2001年臨床病理学研究振興基金「小酒井望賞」を受賞。専門は予防医療学、長寿科学。『人はなぜ太るのか-肥満を科学する』(岩波新書)など著書多数。

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