アップルが「iPhoneの次」に狙っていること スマホ成熟期を迎え、ビジネスの力点に変化

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しかし、アップルだけの世界に脚を踏み込んでいくことに抵抗感を感じる消費者もいるはずだ。アップルほどの巨大企業が急に事業の核となるサービスを止めたりはしない……とは思うが、ネットワークサービスへの依存度が増えるとサービス仕様(価格も含む)の変更や、事業終了が発表されて移行しなければならない時のリスクが高まる。

iOSを担当するプロダクトマーケティングVPのブライアン・クロール氏は「iCloudの提供が中断するようなことは、確信を持って”ない”と言える」と話す。サービスとアプリケーションが表裏一体の現代においては、その言葉を信じるほかないが、視点を変えてアップルが取り組んでいる、デバイスを越えたシームレスな連動をどう伝え、新たな顧客獲得へとつなげるのか?については、まだ課題がある。

iCloudの課題とは?

たとえば、Mobile.meの時代にはWindowsもサポートされ、Windowsを拡張するためのユーティリティが提供されていた。iCloudではアプリケーションをWebブラウザから利用できるものの、前述したような流れるような連携は望めない。せいぜい、オンラインストレージを通じてファイルを受け渡す……程度でしかない。

そもそも、コンシューマニーズとオフィス生産性ニーズをカバーするアップル謹製アプリケーションは、WindowsやグーグルのAndroidには提供されない。言い換えれば、アップル製品だけで固めているユーザー以外は、アップルがどこまでこだわって複数デバイスの連動機能を仕上げているかを体験するチャンスがない。

アップルストアに赴けば、そうしたデモンストレーションを見ることもできるが、本当にアップルが統合された世界観を広め、さらなる事業基盤の強化へとつなげたいのであれば、その入り口、あるいはエッセンスに触れるチャンスを、アップルコミュニティの外からも触れる機会を用意しなければならない。

また、いくらネットのパフォーマンスが向上したとはいえ、クラウドだけが、複数デバイス連動の媒介役なのでは、扱う情報量に自ずと限界が出てくる。たとえばAirMac Extremeのようなストレージ機能を持つWiFi基地局などを用い、iCloudと連動しながらより大きな情報を扱える仕組みも必要になる。

まだ完璧とは言えないものの、「ひょっとしてアップルならやってくれるのでは?」と期待できるところにまでは、完成度は上がってきたといえるだろう。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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