アップルが「iPhoneの次」に狙っていること スマホ成熟期を迎え、ビジネスの力点に変化

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もっとも、今でこそ洗練度が増しているアップルのクラウド型サービスだが、かつての実装は酷いものだった。クラウド時代以前のiDiskはともかくとして、大規模データセンターをノースカロライナ州に建設するというアナウンスとともに鳴り物入りで導入された「Mobile.me」は、ジョブズ時代のアップルの中では最大級の失敗だった。

現在のiCloudも登場当初は洗練度が低かったが、細かな改良に加えて、MacOS X/iOSの年次更新とともに”使える”実践的な機能へと成長してきた。改良とはiCloudを通じた情報複製の仕組みが洗練されただけでなく、OSや標準添付のアプリケーションが持つ機能としても、iCloudの存在を前提として組み立てられるようになったからだ。

たとえば、かつてはiLifeと呼ばれていた一連のアプリケーションがリフレッシュ(iPhotoは”写真”アプリとして大幅な役割変更が実施されている)され、オフィス生産性ソフトのiWorkも市販プロダクトだったものが標準装備になり、MacとiOSデバイスの両方で使えるようになっている。

同じアプリをシームレスに連携

考え方としては、1本のソフトウェアがパソコン、タブレット、スマートフォンすべてで動く、マイクロソフトのUniversal Windows Platformに近いものだが、アップルの解決策はもっとシンプルで、対になるアプリを開発して標準装備させ、シームレスに連携させようというわけだ。

具体的に説明しよう。音楽ソフトGarageBandの最新版には、サウンドループを多重化したリミックスを簡単に作れる機能が組み込まれている。iPad Proにもユーザーインターフェイスが最適化されているので、大きな画面とタッチパネルでまずは音楽の大枠を、指先の操作で組み立てることが可能だ。

これをそのまま保存しておくと、MacでもiCloudを通じてMac版のGarageBandを開き、今度はマウスとキーボード、それにさらに大きな画面で作業をできる。すなわち、iPhoneから上位のMacまで、各機器の特徴を活かしながら使い分けることが容易になる。

同じような使い方は、もちろん”写真”アプリでも、iWorkの各アプリでも可能だ。アップル製品ユーザーにはお馴染みのHandoffを使えば、急に出かける際に、いちいち保存しなくても大丈夫だ。

たとえば、Macで書きかけていたメールを完成させることができないうちに外出といった場合でも、Handoffによって同じApple IDが登録されているiPhone(iPadでもいい)でiCloudを通じて通知されている”書きかけのメール”が手渡され、メールの続きを検討したり、実際に書き込んで完成させてから送ることができる。筆者の場合、読みかけのWebニュースを出先で開いたり、他人に見せたいWebコンテンツをiPadで開いて一緒に見ながら意見を交換するなど、さまざまな場面で自然に使いこなせている。

ブラウザに登録されているお気に入りやリーディングリストを共有といったクラシカルな連動、Facetimeの機能を応用しiPhoneへの音声着信やiPhoneからの音声発信を、MacやiPadから行えるようにするなどの機能統合も行われている。

「アップル製品だけを集めて、アップルのサービスを使い、アップルのアプリケーションを使っているのだから、デバイスを越えて連動するのは当たり前」――。そんな意見もあるだろうが、基本ソフト、アプリケーションソフト、サービス、それに多様な商品ジャンルに渡って商品を提供し、統合できている企業は、現時点ではほかにない。グーグルはハードウェアとの統合度が低く、マイクロソフトはスマートフォン領域で存在感がない(コンシューマ向けアプリの少なさも弱点だろう)。

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