キヤノン、社長交代も「御手洗トップ」は不変 新体制で低成長から脱却できるのか

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御手洗社長は会長に退くが、実質的なトップであるCEOは変わらず続ける

「既存事業が成熟化したことで成長が鈍ってきた。成長回帰をしなければいけないと考え、カメラ事業を大発展させた真栄田専務を後任に選んだ」。1月27日の正午、帝国ホテルにて開かれたキヤノンの社長交代会見で、御手洗冨士夫CEOは後任を決めた理由をこう述べた。

キヤノンは御手洗冨士夫社長(80)が会長に就任し、後任に真栄田雅也専務(63)、社長兼COOに昇格する人事を発表した。3月下旬の株主総会を経て、正式に就任となる。

1995年から社長に就任していた御手洗氏だが、社長交代はこれで2回目。2006年に経団連会長に就任したことを機に、当時専務だった内田恒二氏へ社長の座を譲っている。だが、2012年からは再び社長に復帰。現在まで務め続けていた。

経営トップの交代ではない?

キヤノンにとって、今年は中長期経営計画の節目の年にあたる。この時期の社長交代は自然なタイミングだ。後任の真栄田氏はカメラ畑を歩んできた人物で、御手洗氏は「カメラのデジタル化を推進した指揮官で、一言で言うならイノベーター」と評する。

社長に就任する真栄田雅也専務。会見ではあまり多くを語らなかった

ただ、社長は交代するが、経営のトップであるCEOは依然、御手洗氏が務める。そうした意味で、今回の社長交代は「トップ交代」というわけではなさそうだ。真栄田氏が就任するCOOは、事業を執行する立場の人間を束ねるポジションだ。

また、社長人事と同時に、取締役を17人から6人へと大幅に削減することも発表された。経営の監視という取締役本来の役割を果たす人間と、執行する立場の人間を分離することが狙いだ。

今回の人事全体を見ると、組織全体の監視と執行を分離し、そのうち後者の統括を御手洗氏から真栄田氏へ移動させたという見方ができる。CEOが最終責任を追う点は以前と変わりないが、御手洗CEOは主に人事や総務、真栄田COOは事業運営を担うという。

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