キヤノン、社長交代も「御手洗トップ」は不変 新体制で低成長から脱却できるのか
ただ、今回の人事で真栄田氏が御手洗氏の後継者候補の筆頭になったのは間違いない。御手洗氏は「ほかにCEO後任候補を考えるといった面倒な方法は考えていない。真栄田氏にはずっと成長してもらいたいと思っている」と述べた。
真栄田氏に求められるのは、なんといっても事業成長だ。キヤノンはカメラと複写機のデジタル化の流れに乗ることで、現在の規模まで拡大してきた。ただ、今では両事業ともに買い替え需要が一巡。低価格帯のデジカメはスマートフォンのカメラ機能の向上によって、市場縮小を余儀なくされている。
社長交代と同日に発表された2015年12月期の通期決算を見ても課題は明らかだ。売上高はカメラ市場の縮小などで、前年同期比2%増の3兆8000億円。5年前の経営方針説明会で売上高5兆円を目標として掲げていたことを考えると、満足な水準とは言いがたい。営業利益も同2.3%減の3552億円にとどまる。
当然、キヤノンも手をこまねいているわけではなく、成長に向けた種をまいてはいる。特に、近年積極化しているのが買収だ。2013年に約1000億円で産業用印刷システムを手掛けるオセ社の買収を完了、2014年には半導体製造装置開発を手掛けるモレキュラーインプリント、2015年も監視カメラ世界首位のアクシス社を買収するなど、既存事業の周辺で立て続けに買収を行っている。
「新体制」で変化を示せるのか?
買収の食指は医療分野にも及ぶ。東芝が経営再建の一環として売却を検討している医療機器会社・東芝メディカルシステムズがそうだ。会見で田中稔三副社長は「(買収合戦に)過熱感はあるが、千載一遇のチャンスだ。入札に手を上げている」と意欲を示している。
ただ、これらの打ち手は、まだ成長の原動力になるまでには至っていない。新規事業を育て、全社の業績を引き上げることが真栄田氏の課題だ。会見では「事業の本質は強い商品、これまで培ってきたモノを全社で展開していけばより強い会社ができる」と持論を語った。
変化の兆しは見られるものの、ここ数年、低成長から脱却できていないキヤノン。経営体制が変わった今、事業構造の変化を加速できるかどうかが問われることになる。
(撮影:梅谷秀司)
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