アルプス電気社長「就任3年、利益9倍」の内幕 復活のカギは、シンプルなメッセージだった

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栗山社長はシンプルなメッセージを掲げ、アルプス電気を牽引してきた(撮影:大塚誠)
電子部品大手のアルプス電気は、かつての主力事業であるHDDヘッドの不振とリーマンショックのあおりから、2009年3月期には265億円の営業赤字に陥り、その後も営業利益は低空飛行を続けていた。だが、2012年6月に栗山年弘社長が就任すると、業績は急回復。2013年3月期に68億円だった営業利益は今期、605億円を見込むほどに回復した。栗山社長はアルプス電気の何を変え、どう成長につなげたのか。

 

――就任当初から、どんな方針で改革を進めたのか?

以前のアルプス電気は、リーマンショックの後、売り上げが約4分の3に落ち込み、2009年に大赤字を出した。コストを下げる活動によって赤字は止まったが、その後3年ほど利益は増えなかった。売り上げが伸びなかったからだ。

そこで、社長就任後は「損益分岐点を下げたのだから、今度は売り上げを増やさなければならない」という思いでやってきた。その結果、売上高は毎年2ケタペースで伸び、昨年度はリーマン前の水準に並んだ。今年度もこのままいけば、昨年の実績を上回る。利益が出る体制になってきた。

組織も人も、大幅に見直した

――社員に向けて、何を呼びかけてきたのか?

アルプス電気は、ベクトルがそろえば、みんなで力を発揮できる会社だ。日本企業に多いかもしれないが、how to(どうやるか)で戦えば強いが、what(何をやるか)が明確でないと負ける。とはいえ、whatが明確でなければhow toの戦いに持ち込めない。そのため、whatを私が考え、それを社員と共有できるようにしてきた。

社員はどうしても「利益を出したい」と考え、ビジネスを選り好みするが、それよりも仕事を増やすのが先だと考えた。そこで、「仕事を増やそう」とシンプルな言葉で3年間言い続けた。当たり前のことだが、何度も言い続けることが大事だ。今ではそれが浸透している。

――具体的にどう改革したのか?

まず「車載で2000億円、スマホで1000億円」という売上高目標を掲げた。さらに、売り方も変えた。世の中ではマーケット・インと言われるが、われわれの製品はカタログで売る部品じゃない。お客さん1社1社とすり合わせで製品を開発する『カスタマー・イン』だと言い聞かせてきた。

組織も大幅に改編した。市場別だった組織を機能別に変えた。コモディティ化していた家電やPC事業の人員はスマホと車載に大胆にシフト。5つあった技術部門も1カ所に集約し、技術を事業間で共有しやすくした。

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