アルプス電気社長「就任3年、利益9倍」の内幕

復活のカギは、シンプルなメッセージだった

――その一方で、変えなかった部分は何か?

企業文化、アルプスイズムは残そうと意識していた、漢字で言うと「誠実・挑戦・連帯」。この三つの文化を大事にしようと言ってきた。たとえば、挑戦において重要なのは加点主義。私に限らず、失敗して赤字を出した人でも、そこで成長した人はどんどん出世する、そういう会社だ。失敗と出世が連動していないことは、私自身もすごく感じている。こうした点は生かそうとしてきた。

問題児だった2つの事業を、躍進のタネに変貌させた(撮影:大塚誠)

――大幅に伸びてきたのは、スマホと車載向け部品だ。

スマホ分野はそれぞれの部品が順調に伸び、中でもカメラ機能に使われるアクチュエータが軸だ。だが、この部品はかねてからの問題事業だった。

もともとカメラモジュールを事業化したのは2000年代半ばで、当時はアクチュエータというよりも、センサーもレンズも付けたカメラモジュール一式で、国内のハイエンドケータイ向けだった。ただ、われわれの得意な技術ではなく、他社から購入する部品も多いため、強みを発揮できなかった。

そうした中、リーマンショックのときに事業を整理することになった。そこで、アルプス電気の強みは小型のメカトロ技術だということで、カメラのアクチュエータに絞ってビジネスをやり始めた。その後は、得意な金型や自動機の技術がスマホの拡大にフィットし、事業を大幅に拡大できた。

タッチパネルもそう。スマホやタブレットが普及する中で、中国、台湾などの新興国メーカーが参入し、過当競争に陥った。そこで、曲面のタッチパネルや薄いタッチパネルなど、他社にはできない技術に集中して開発してきた。それがハイエンドスマホで評価され、ようやくこの1、2年で世の中に出てきてくれた。

アクチュエータもタッチパネルも「こんなに赤字を出してどうするんだ」という問題児だった。だからといってやめるのではなく、そこから学び、改善を加えることで業績を伸ばす、加点主義の考え方が生きている。

どの分野でも「強み」は変わらない

ーー車載向けはどう伸ばしてきたか?

車載向け部品は、スマホの普及によって、ハンズフリーやBluetoothなど、車内通信が増えてきた。さらに先進運転支援システム(ADAS)が普及する中でセンサーの重要性が増してきた。そうした中、注力してきたセンサーやコネクティビティ部品を伸ばすことができた。特定の会社に依存せず、世界中の会社と取引しているのも一因だ。多くの会社の情報を取り込んで、開発を進めることができた。

――かなり守備範囲が広い。どこにコアがあるのか?

市場が変わっても技術はそれほど変えていない。人間と機械との情報のやりとりを仲介する「HMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)」、センサー、コネクティビティ、この3つがコアだ。IoTなどの新分野でも、われわれが手掛けるのは、入口にあたるセンシング、それをクラウドにつなげるコネクティビティだ。

また、生産技術にも強みがある。アルプス電気は金型を作り、それを使って部品を自動機で組み立てることをやってきた。スマホのアクチュエータは小さな部品がいくつも組み合わさっていて、それを月に何百万個と作らなければならない。こうしたビジネスにおいて、他社にはできない品質の安定性と大量生産力が強みになった。

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