2つ目の幹は、「訴えたい、たった一つのメッセージを見極め、相手が受け入れやすい言葉にすること」だ。
驚くことに、日本人のプレゼンの90%ぐらいは、「メッセージ」不在だ。「このプレゼンで訴えたいメッセージは何ですか」と聞くと、口ごもるか、「さて、なんだっけ」、もしくは「うちの企画を通して」とか「とにかく稼げ」など、相手に刺さるメッセージもなく、自分の言いたいことを一方的にだらだらと話して終わる、というパターンが圧倒的だ。
まず、「何を伝えたいのか」を見極めること。そして、相手の気持ちになってそれを聴衆に受け止めてもらえるメッセージに変換する。先ほど挙げた「殻」を破るということは、何も恥知らずに自分の好きなことを言え、ということではない。Put your feet in other’s shoes. つまり、相手の立場になって考えてみることがプレゼンの大前提だ。
ドラマの主人公のセリフをマネしてみよう
3つ目の幹は「プレゼンに魂をこめる」。
「下町ロケット」の佃航平だって、半沢直樹だって、「あさが来た」のあさも、いざという場面では恐ろしいほど念力のこもったコミュニケーションで相手を動かしていく。念力にもいろいろあるが、最もベーシックなものは「情熱」や「思い」だ。
冷め切った、思いのこもらない口調で、彼らが話していたら、そこまで心揺さぶられることもないだろう。「あれはドラマだから」「普通の人がやったらクサイ」なんて思ってはいけない。演技であれば、確かに鼻白んでしまうかもしれない。しかし、自分の心の底から湧き上がってくる思いを、情熱をこめて伝えることは、表面的な「演技」とは、まったく異なるものだ。ロジックではなく、思いや情熱こそが相手に伝播する。だから、プレゼン前には、どういう「思い」を伝えたいのかを、「メッセージ」とともに、じっくり考え、見極めておきたい。
3つの幹は、結局のところ、何回も試行錯誤して体得していくスキルであり、具体的にどうすればいいのか、わかりにくいかもしれない。一つ、オススメは、例えばドラマの主人公になったつもりで、セリフを練習すること。例えば、佃航平のこんなセリフはどうだろう。「どんな難問にも必ず答えがある。みんなの力をどうか貸してほしい」。間の取り方や語気、抑揚、など色々試してみるだけで、ちょっと度胸がついてくる。
日本人の「分厚い殻」を破るには、アクティングの手法は高い効果を発揮する。そう考えて、この手法を何とかメソッド化できないか、知り合いのアメリカ人俳優の力を借りて、筆者も知恵を絞っているところでもある。来年はそんなノウハウも少しずつ、ご紹介できれば、と考えている。
最後に皆さま、今年一年、ご愛読ありがとうございました。「S系」との定評(?)に恥じぬよう、自身も「コミュ力の修業」に精進し、さらなる「鍛え方」をビシビシ、お伝えしたいと思っています。来年もよろしくお願いいたします。
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