貧困度の高い日本は格差是正策を打つべきだ OECD加盟34カ国で6番目に高い貧困度

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所得は雇用からだけではなく資本の所有からも生まれるものである。トマ・ピケティは日本での、資産と所得の高い相関に注目した。だが富の所有と富のコントロールとの区別をすることが重要だ。

今日では多くの国で、富は100年前よりもずっと公平に分配されている。だが、確定拠出型年金基金に入っているからといって、その基金が投資する会社の意思決定に参加することはできない。だから私はステークホールダー間での力のバランスを見直す必要性について論じている。

この目的のために、独占禁止政策に所得分配の観点の導入や、適切な労使関係の確保がなされてよい。

TTIP(環大西洋貿易投資連携協定、米国とEU〈欧州連合〉の間のFTA〈自由貿易協定〉で大西洋版TPP〈環太平洋経済連携協定〉といわれる)のような案件に関しては、事業者と同じように労働者と消費者の利害も反映されるべきだ。

公平性と効率を共に発展させることは可能

私の著作では、不平等を減らし貧困に対処するための提案を紹介している。それにはもちろん異論もあるだろう。

1つ目に、「公平性と効率のトレードオフ」は国民所得とその成長力を減じるものだと言う人もいると思われる。それに対して私は、そうした異論は現代の経済の仕組みをどのように理解するかに決定的に依存しているのだと答えたい。市場経済には多くの欠陥があり、公平性と効率を共に発展させることのできる状況があるのは明らかである。不平等を減らすことは経済のパフォーマンスを高めることと矛盾しない。

2つ目に、「グローバル化された経済において、国家は不平等の縮小などという選択肢を選べない」と言う人もいるだろう。それには、国家はただ単に世界の発展を受動的に受け止めるだけの存在なのではないと私は答えたい。一国の富の分配は、変化し続ける世界へ政府がいかに対応するかで変わる。

3つ目の異論は「私たちにそんな余裕はない」というものだ。確かに、身を切る選択をする必要もある。もし真剣に不平等を減らして貧困に対処したいと思うのならば税は引き上げられなければならないだろうし、どのように市場での所得が決定されるかについて再考しなければならない。

やるべきことはある。私たちは「何もできることはない」などと口にするべきではないのである。

(「週刊東洋経済」2015年12月26日‐2016年1月2日号〈21日発売〉より転載)

アンソニー・アトキンソン 英オックスフォード大学フェロー

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Anthony B.Atkinson

英オックスフォード大学ナフィールドカレッジ元学長。所得分配論の第一人者であり、国際経済学会会長、欧州経済学会会長などを歴任。

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