世界も認める「武士道」に学ぶビジネスの心得 その普遍性が今を読み解くヒントになる
今年も残すところ半月余り。この年末年始は早い企業だと12月26日(土)から冬休みに入り、最長で9連休を過ごすというビジネスパーソンも少なくはないだろう。自宅の大掃除を進めるだけでなく、旧年の振り返りと新年を迎えるにあたって、ゆっくりと心の整理ができる時期でもある。
こんなときにオススメしたいのが、古典に当たることだ。『論語』から『ケインズ』まで。その読み方に正解はないが、「温故知新」という言葉もあるように古典には普遍的な事項が記されている。そのうちの1冊として、海外で日本人が発表し、世界でベストセラーになった名著がある。
今からさかのぼること110年以上前の1900年、アメリカで1冊の本が出版された。タイトルは『武士道』(原題『Bushido ―The Soul Of Japan』)。著者は、旧5000円札の肖像画にもなった、新渡戸稲造である。
『武士道』は、新渡戸がアメリカ滞在中に書き上げたものだが、刊行されて数年のうちに、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロシア語、ポーランド語など各国語に翻訳され、世界的なベストセラーとなった。日本でも、1908年(明治41年)に学問的注釈が加えられた日本語訳が出版されている。
いったいなぜ、『武士道』は、これほど多くの国で読み継がれてきたのだろうか。拙著「まんがでわかる 新渡戸稲造『武士道』」(あさ出版)を通じて取り上げている、その本質について考えてみたい。
理由はおそらく、その「普遍性」にあるだろう。『武士道』では、文字どおり、「武士」が重視した伝統的な価値観や行動規範が述べられているが、これは、「日本」の「武士階級」の中だけで通用するものではない。武士の高潔で気高い生きざまは、時代や国境を超えて、すべての人間の心を打つのである。
武士が尊重した7つの価値
一つ断っておけば、武士道には、『聖書』や『論語』、『コーラン』のように、教義が書かれている特別な書物が存在するわけではない。新渡戸が『武士道』を著す前にも、山本常朝の『葉隠』、井沢蟠龍の『武士訓』など、武士道精神について述べたものはあったが、もともとは日本の風土の中で自然発生的に培養されてきた、不文律の「掟」である。
武士の思想を体系的に網羅した書物は新渡戸の『武士道』だけだが、解釈や定義は人によって異なることもある。本稿では以下、新渡戸の著作については『武士道』、一般用語としての武士道は「武士道」と分けて表記する。
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