世界も認める「武士道」に学ぶビジネスの心得 その普遍性が今を読み解くヒントになる

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さらに、勇には敵に立ち向かっていく表面的な強さと、どんな場面でも動じない平常心の2つがある。勇気のある武士は、つねに穏やかで動揺しないはず。これは、ストレスフルな環境のなかで、メンタル強化の必要性が叫ばれているビジネスパーソンにとっても示唆的な内容を含んでいるといえそうだ。

他者を尊重し、重んじる心――礼

最後の「礼」も、武士にとっては重要な徳目であった。

礼というと「礼儀」を連想することから、ビジネスパーソンにとっては、「礼=ビジネスマナー」と解する人も多いだろう。

それだけではない。『武士道』によれば、「礼」は「相手の価値は世界中の何物にも勝る」という考え方にもとづいており、「他者の喜びや悲しみを自分のことのように感じる能力でもある」とも説いている。つまり、形式的、儀礼的な礼儀作法を身につけるだけでは不十分だということだ。

近年、サービス業を中心に、ホスピタリティの向上を掲げている企業が増えている。
それ自体は素晴らしいことだが、内容が接遇・接客の型を追求するだけのものになっていれば、本当の意味での「礼」にはほど遠いということになるだろう。

武士にとっての究極の理想は「非戦」

「武士道」は、好戦的で、死を礼賛する思想だと思われがちだが、これこそが最大の誤解である。「武士道」の体現者であった勝海舟は、その生涯で何度も暗殺の標的にされたが、一度も自分の剣を血で濡らすことはなかったという。『武士道』の中では、「最善の勝利は血を流さずに得た勝利である」という格言が紹介されている。

意外にも武士の究極の理想は「戦わないこと」だった。これをビジネスパーソンに当てはめてみると、他者と不毛な争いをして疲弊するよりも、自らの特性を生かして競争相手がいない市場を探して勝負するというポジショニングが、実は意外にも大事だということと近い。

圧倒的な力を持った者が、その力をどうとらえ、己をどう律してきたのか――。武士道には、現代のビジネスパーソンが今を読み解くためのヒントも少なくない。

岬 龍一郎 作家・評論家

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みさき りゅういちろう / Ryuichiro Misaki

早稲田大学を経て、情報会社・出版社の役員を歴任。退職後、著述業のかたわら、人材育成のために「人間経営塾」を主宰。国家公務員・地方公務員幹部研修、大手企業研修などの講師を務め、「人の上に立つ者の人間学」を説いている。

著書に、『いま、なぜ「武士道」か』『内村鑑三の「代表的日本人」を読む』(以上、致知出版社)、『新・武士道』(講談社+α新書)、『新渡戸稲造 美しき日本人』(KKベストセラーズ)、訳書に、『「現代語抄訳」言志四録』『「現代語抄訳」論語』『「現代語抄訳」菜根譚』『「新訳」一日一言』(以上、PHP研究所)、『武士道』『学問のすすめ』『「超訳」、論語 自分を磨く200の言葉』『「超訳」老子 心が安らぐ150の言葉』(以上、PHP文庫)など多数。

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