これは「ハーズバーグの動機づけ・衛生理論」というもので、人間には「満たされるとやる気が上がる動機付け要因」 と、「満たされて当たり前の衛生要因」 の2つの要因があるとしています。
「給与、地位、対人関係、仕事環境」などは十分に満たされて当たり前の衛生要因とされます。例えば部下と給与の条件などで交渉になり、部下の要求をのんだとしても、それがやる気にはつながらないといったことです。
一方、動機付け要因は「達成感、責任感、やりがい、承認」などを指します。これらは目には見えないけれど、人が動く上では非常に重要な要素です。それらを満たすことができれば、多少の衛生要因の不満であれば、帳消しにできることもあります。つまり、達成感や承認欲求が満たされないというのは、給与や地位などへの不満として形を変えて表れていることも多いのです。
もし、「部下にやる気を出してもらいたい」ということが部下との交渉におけるゴールだとするなら、取るべき手順は明らかです。
給与や対人関係のもつれだけにフォーカスせず、彼・彼女の「満たされない感情」にフォーカスしてあげるのです。
この場合にもやはり「絆」を強めることは効果を発揮します。相手に徹底して興味を持ち、相手の可能性を信じて仕事内容や責任範囲を変えたり、承認欲求を満たすような表彰プログラムなどを考えていくと効果があるはずです。
「コト系」と「ヒト系」を読み違えない
さて、ここまで2つのネゴについて紹介してきましたが、筆者の経験上、失敗パターンもだいたい2つに大別されます。
ひとつは「コト系ネゴ」で、立場や体面といったヒト系の要因に配慮せずに、相手の気持ちが次第にこじれ、本来目指していた妥当な解決ができなくなってしまうパターンです。もし、気がつけばガチンコになっていた、もしくは気まずくなることが多いという場合は、相手の立場や対面への配慮をしていないことがほとんどです。「交渉は攻撃ではない」ことを認識しましょう。
もうひとつは、「ヒト系ネゴ」において、表面上の要求をどう解決するかに終始してしまい、そこでもっとも重要な相手の気持ちを更にこじらせてしまうパターンです。
相手が要求する諸条件に誠意と時間を尽くして希望を叶えたとしても、「やっぱり分かってない!」と更に悪化することは少なくありません。面倒に感じるかもしれませんが、できるだけ「会話」する時間を持ちましょう。そこでは相手が出してくる条件以外のことをできるだけたくさん聞くことに集中しましょう。一見回り道に見えるかもしれませんが、ヒト系ネゴにおいて無駄話は無駄ではないのです。
この2つのネゴパターンの特徴を押さえれば、ハードな衝突が避けられ、タフなネゴシエーションなどしなくて済むわけです。長いキャリア、衝突してばかりでは身も心も持ちません。難しい局面でもスルリとかわしていく、「ネゴシエーションスキル」を身につけたいものです。
今回は、利害関係者との交渉について表技・裏技をご紹介しました。次回は自分の主張を効果的に伝えるためのプレゼンテーションスキルについてご紹介します。
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