「過程が成果」。戦略コンサルタントをしている時に先輩から言われた言葉です。
「コト」にフォーカスすると言いつつも、所詮、交渉は人間同士のやりとりです。相手の体面をつぶすような交渉はその時はよくても、長期的にキャリア形成の中でいつか足元をすくわれる地雷を自分で埋め込むようなものです。丁々発止の駆け引きよりも、相手を巻き込んでいく過程こそが高度なネゴシエーションではないでしょうか?
「相手の問題を、相手に自分自身で発見、指摘させる」という裏技、是非活用してみてください。
次は、「ヒト系ネゴ」についてです。
人対人のネゴは、往々にしてやっかいなケースになりがちなのではないでしょうか。部門間の対立であったり、トラブルで顧客企業とモメてしまったり、果ては夫婦間のケンカもそれにあたります。そもそもの感情のもつれや、一触即発の張り詰めた緊張感があり、まともな交渉にならないこともよくありますね。
そんな状況にも対応するための学習機会を、当時勤めていた会社は提供していました。海外から、人質をとった犯人と交渉するプロフェッショナル・ネゴシエーター(!)を講師に迎えたセミナーを実施したのです。
講義の中で非常に強く感銘を受けたのが、「相手との絆(Bonding)」という考え方です。人質をとって立てこもるような相手に対して、一つひとつ共通点を探し出し、絆を築いていくのです。
そこでやることは、相手に対して「興味」を抱き、「相手の可能性を信じる」ことに尽きます。現在のひどくこじれた状態だけで相手を見るのではなく、例えば生い立ちなどあらゆる面で相手と自分の共通点を増やし、最後は「われわれは解決に向けて何ができるか」という検討プロセスに入っていく、というのです。
ここでのポイントは、「われわれ」といえるだけの「共通のベネフィット(利益)」を見つけられるかどうかです。絆が結ばれている証として「われわれ」という言い方をするということ。そして一見、双方が納得するような利益がなさそうな状況から、一緒に変化を受け入れて利益を見つける協力体制に変えていくのです。
かつて、手強いクライアントの報告会の席で、自社ではなくクライアントの役員の隣に座り、こちらの報告書について手厳しい意見を言うプロジェクト責任者の役員がいました。実は、われわれ部下への嫌がらせではなく、クライアントとの絆を築くためにあえてとった行動だったと聞いて、当時、なるほどと納得したことを思い出します。プロジェクトメンバーたちからは微妙に恨まれていましたが、相手との「絆」を作り出すために、そこまでやる人も実際にいるのです。
それから、部下や一緒に働くメンバーから要求を受けて交渉するリーダーである場合、覚えておくべきことがあります。それは、相手の要求をそのまま受け入れたとしても、相手は満足しないかもしれないということです。
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