まずは事実を自分と人事で共有し、人事側に問題があることにそれとなく気づいてもらうようにします。例えば、中途採用者のパフォーマンス調査を持ちかけたりします。自ら行った調査結果で判明した問題については自分の問題として捉えざるをえませんから、その解決に向けて主体的に取り組んでもらえるでしょう。
そのうえで、あなたは協力者として、一緒に改善策の選択肢(オプション)をいくつか作り、自分の望む条件をそこにきっちり入れておく。そうすれば、あなたの考える改善策が、自然な形で取り入れてもらえるかもしれません。
建設的でいて、成功率も成果も高い交渉。それには、このように両者が同じ「コト」を解決していくとスタンスを取り、オプションを一緒に作っていくというプロセスが必須です。
こちらから相手に問題を突きつけ、改善を迫るような交渉は、たとえその内容が正しかったとしても、単に相手のいいなりになったという印象を周囲に与えるのが嫌なために、拒絶し続ける人もたくさんいます。特に立場が上になればなるほど、自分の部門の仕事について物言いがつくのを快く受け入れるのは、すなわち自分の責任を問われることにもつながりかねず、抵抗されることが多くなります。そういう経験がある人も少なくないのではないでしょうか。
相手の顔を立てることを忘れない
このようにコトにフォーカスすると言っても、相手の顔をつぶさないこと、体面を保つことは絶対に忘れてはいけないポイントです。
私も人材育成部門のリーダーをしていたときには、これらの交渉に苦心していました。当時の私の仕事の中では、予算を確保するための交渉が非常に大きなウェイトを占めていました。不景気になったり、会社の業績が悪くなったりすれば、真っ先に削減対象になると言っても過言ではないのが人材育成の予算です。普通にしていたら、前年比から半減につぐ半減で見る影もなくなっていくのがおちです。
そんな中で、財務部門と真っ向勝負で交渉しても、得られるものがないのは明らかです。そこで、相手がどういう状態だったらよいのかというゴールを共有するところから交渉をスタートさせました。
例えば、会社全体としてどれくらいの削減目標なのか、実際に部門間でどう割り振るのかなどを事前に調べたうえで、最初に申請する金額と、人材育成予算の削減オプションを財務部門と一緒に作成しました。「松竹梅のオプション」を用意し、自分が望む案がいちばん妥当に見えるようにしたわけです。
それでも難しい場合には、「コストをどう削減するか?」ということ以外に、別の観点の目標を持ち出して、交渉にあたる必要性に迫られます。
例えば、「競合にどう勝つか?」といった共通の目標をたて、別の次元に持ち込むわけです。そこで当時の私は、競合会社の人材育成状況をベンチマークすることから始めようと、取引先や顧客の声を徹底的に集めました。予算削減額だけでは同じ目標を持てないからです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら