そんな手痛い経験をしつつ、数々のリーダーシップトレーニングを受けていくうちにいつしか、ネゴシエーションのゴール感やそのプロセスにおいて何に注意すれば最終的には失敗しないのかが見えてきました。
会社から独立した際、次のリーダーへの引き継ぎは「利害関係者」と「ネゴシエーションの極意」が中心であったほどです。実務の引き継ぎももちろんありましたが、戦略がものすごいスピードで変化するグローバル企業という環境では、実務を詳細に引き継いだところで、あまり意味をなさないことが多かったのです。
その一方で、ネゴシエーションスキルは市場環境が大きく変化したとしても腐らない、一生もののスキルと言うこともできるのです。
ネゴシエーションのタイプは2つ
さて、一口にネゴシエーションと言いますが、大きくわけて2つのタイプがあることを知っておくとよいでしょう。
この2つです。
ビジネスシーンにおける多くの交渉は、「コト系ネゴ」だと思われるかもしれませんが、トラブルが発生した時の会社間や、対立している部門間、上司と部下など、だいたいのケースでは感情のもつれが根底にあるため、ビジネスライクな交渉術では解決しない「ヒト系ネゴ」ケースも非常に多いものです。
「キャリア力」が高い人はこの「ヒト系ネゴ」スキルも高いのが特徴とも言えます。
「ヒト系ネゴ」にものすごい手腕を発揮する「妖怪」のようなツワ者が難攻不落のクライアントとの交渉を成立させてくると、いったいどんな妖術を使ったのかと仲間内で話題になったりしました。でも、やはりそこにもテクニックがあります。それでは、2つのタイプのネゴシエーションテクニックをご紹介していきましょう。
まず、ひとつ目の「コト系ネゴ」。ポイントは2つです。
①ヒト(立場や責任)ではなく、コト(目的やゴール)にフォーカスする
②オプション(選択肢)を一緒に作り、合意する
失敗例をあげてみましょう。たとえば、自分の部署で優秀な人が採用できないと困っている場合。あなただったら人事担当者に何と言うでしょうか。「優秀な人材の採用ができていないので、採用プロセスを見直すべきだ」と言ったとしたらどうでしょう。おそらく人事部長は「お前のやり方が悪いから、いい人材が取れない」と批判されたと受け取るでしょう。
こちらの意見の正しさを証明しようと、採用した人材がいかに出来がよくないかという証拠を集めて理論武装していこうものなら、ますますひどい拒絶反応を起こされるかもしれません。これは交渉ではなくて、「攻撃」だからです。戦うだけ無駄で、仮にプロセス見直しが始まるにしても人事は嫌々やるので、望んだような成果につながらない可能性も高いでしょう。
それでは、いったいどうすればいいでしょうか。
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