今後の世界経済は「産油国」に用心が必要だ

石油価格の再浮上は当分先のことになる

もっと洒落にならないのはロシアである。昨年の今頃、プーチン大統領は記者会見において、「ロシア経済はあと2年大丈夫」「その間に石油価格はかならず反転するだろう」と述べていた。今はシリアを空爆してロシア製最新兵器を見せびらかしながら、さりげなくウクライナ戦線では手を抜き、GDP比3%にまで膨らんだ財政赤字を、予備基金の取り崩しなどでこっそりファイナンスしている。そのおカネもあと1年くらいしかもたないはずである。ゆめゆめ強気のポーズにだまされてはなるまいぞ。

資源の専門家たちは、これまでずっと楽観的であった。「いったん下がってもまた元に戻る」「生産コストからいって80ドル以下はありえない」といった強気論をよく聞いたものだ。「掘削リグがこれだけ減ったからもう大丈夫」という説明も何度も耳にした。ところがいかんせん需要が弱く、次第に「年末60ドル台なら御の字」くらいの弱気論に傾き、それも今では望外の水準となってしまい、強気論者はほぼ絶滅危惧種になりつつある。

パラダイム転換多いエネルギーの世界

あらためて肝に銘じよう。経済予測でもっとも当たるのは人口動態で、もっとも外れるのは石油価格である。だからエネルギーの世界においては、何があっても驚いてはいけないのである。

われわれが生きてきたこの短い間にも、1973年の石油ショック、1980年代後半の逆オイルショック、そして2003年以降の高値ラッシュなど、この世界ではしょっちゅう「パラダイム転換」が起きてきた。すなわち、皆が今まで「当たり前」だと思ってきたことが、ある日突然に変わってしまうのだ。だからこそ専門家が間違える。専門家であればあるほど、古いパラダイムに精通しているからだ。

現在進行中の石油市場をめぐる変化によって、新たなコンセンサスが生まれつつある。FTのマーティン・ウルフ記者によれば、石油が有限で価格は長期的に上昇するという従来の考え方はもう当てはまらない。流れを変えたのはアメリカのシェール開発であった、という(”Understanding the new global oil economy” Financial Times 2015年12月1日)。

シェールオイルの採算は1バレル50ドルから60ドルといったところだが、その生産性は2007年から14年にかけて30%も改善した。アメリカの石油生産量は、需要拡大の2倍の速さで増大した。これじゃ石油が値崩れするのも無理ないよね。その結果、何が起こるかというと、石油供給の価格弾力性が高くなる。すなわちシェール生産は投資も回収も早いので、値段が上がれば生産し、下がれば休むということが可能になる。これでは固定費の高い、巨大な油田を抱えている伝統的産油国は太刀打ちできなくなる。

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