ECBドラギ総裁とOPEC総会への失望は大きい 株式市場の期待高める要人発言に注意せよ
株式市場は再び不安定な動きにある。「なぜ下げるのかがわからない」といった声もあるようだ。米利上げや中国を初めとする新興国経済の不透明感、原油安が下落の背景にあるとの説明が聞かれ、よい材料を探そうとしても、なかなか見つからない。前回の本欄では「日米株価の堅調なのは最長でもあと2週間」としたが、掲載翌日から下げ始めた。結果的に、「二つのディスアポイントメント(失望)」が市場を支配したといえる。
「ドラギマジック」に振り回された
4日発表の米雇用統計は堅調な内容となり、これで米国の利上げは確定的となった。イエレンFRB議長が指摘するように、「利上げは米国経済が堅調な証拠」となるだろう。しかし、一方で市場はそのような発言ではなく、別の要因に振り回されているようにみえる。そのひとつが「ドラギマジック」である。
先週の本欄では「ドラギマジックへの過度な期待は禁物」とした。3日のECB定例理事会では、それまでのドラギ総裁の「やれることは、なんでもやる」発言により、相当の規模の追加緩和策が決定されるとの期待が高まった。その結果、ユーロは対ドルで一段安となっていた。しかし、ふたを開けてみると、緩和策の実態はむしろ後退しており、市場の期待を大きく裏切ってしまった。
結果的にこの日の株価は大幅安となり、市場の失望がそのまま反映されることとなった。驚きはこれにとどまらなかった。翌4日には再び追加緩和の可能性に言及し、市場の混乱の収束を図ろうとした。これが上手くいき、前日に大幅安となっていた米国株はその大部分を取り戻す大幅上昇となったのである。
それにしても、ドラギ総裁は罪な人である。このように、市場を振り回すのを楽しんでいるわけではないだろうが、少なくとも、自分の発言で市場を動かせると勘違いしていた可能性は非常に高い。また、ECB内ではドラギ総裁のこれまでの発言の意図に対して、強い批判が出ていると報じられている。ドラギ総裁が市場の期待を高め過ぎたことから、保守的な理事会メンバーが態度を硬化させてしまい、本来期待されていた緩和策は議論のテーブルにさえ乗らなかったもようである。
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