少し前に某社から「来年のビックリ予想を書け」という宿題を頂戴した。この季節にはよくあるネタで、今は誰もがありえないと思っているけれども、実はその可能性は十分にありますよ、てな予測である。さしずめ今なら、「ドナルド・トランプ氏が共和党の正式指名候補になる!」みたいなのが受けるかもしれない。あたしゃ可能性ゼロだと思うけどね。
そのときは「2016年は石油価格が1バレル20ドル台をつける」との回答を提出した。ところがその後、12月4日のOPEC総会が開催され、案の定、減産を決められないという結果を受けて、今週の石油価格は40ドル割れし、7年ぶりの安値をつけている。20ドル台の石油価格はもはや「ビックリ」でもなんでもなく、ごく普通の予想になってしまったかもしれない。
石油価格下落は消費国にはグッドニュース
なにしろこの後、今までは制裁を受けていたイラン産原油も国際市場に出てくることになっている。産油国の財政はどこも青息吐息で、誰かに減産してほしいけど、自分はやりたくない。こういうときの守護神、サウジアラビアも自国のシェア確保を優先していて、むしろ今までのバラマキ歳出の削減に手を付け始めた。同国としてはまことに画期的であるが、あなたがそんなことしていて大丈夫? という気がしないでもない。
つまりこの先、石油の供給は減らない。逆に需要側は、「新常態」となった中国を筆頭に、新興国経済が軒並みスローダウンしている。この調子では、石油価格が再浮上するのは当分先のことになるのではないか。
普通に考えれば石油価格の下落は、消費国にとってはグッドニュースである。さしあたって、日本も真っ先に恩恵を受ける側である。日本の輸入84.6兆円(2013年度)のうち、鉱物性燃料は約28.4兆円、そのうち石油が約14.8兆円であった。つまり国全体として、エネルギーが輸入全体の3分の1を占め、石油が6分の1を占めていた。燃やしてしまえば、後はCO2と灰しか残らない化石燃料に、そんな大金を払っていたのだからもったいない話である。しかるに1バレル100ドル時代はずっとそういう状態が続いていた。
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