岡田監督の指導は独特で、すでにスピード化がトレンドになりつつあった箱根駅伝で、マラソン練習のような距離を徹底的に踏むハードな練習を慣行。高校時代に実績がなかった選手たちに“魔法”をかけたのだ。
「自主性に任せるのは無責任」と言い切る岡田監督
亜細亜大学を“卒業”した岡田監督は、女子実業団チームの指導者を経て、2010年春に拓殖大学の指揮官に就任する。そして、低迷していたチームを1年で立て直すと、初年度の箱根駅伝で最高順位タイの7位に導いた。
拓殖大学でも亜細亜大学時代と同じように、距離からのアプローチで箱根駅伝を目指している。岡田監督のトレーニングで象徴されるのが、毎年8月に行われる阿蘇合宿だろう。選手の間からは、「地獄の阿蘇合宿」と呼ばれるほどハードな日々が続く。
「亜細亜大学時代に1日平均で40kmをノルマにするようになって、徐々に結果が出だしたんです。だから、阿蘇は20日間で800km以上走りますよ。多い日は、朝練習で40km走をやって、午後に60分ジョッグで10km以上は走るので、1日で50kmを超えますね。選手は大変ですけど、20日間の合宿で自信をつけることができるんです」
合宿中は亜細亜大学が優勝したときの練習メニューを張り出して、その右側に、実際に行ったメニューを書き込んでいく。「だいたい5日おきにミーティングをして、優勝したときの練習をクリアしているぞ、ということを選手の目で確認させます。こういう実績やデータを蓄積して活用することは、選手育成にも役立ちますね」と岡田監督は話す。消化具合を比較することで、選手たちに自信をつけさせていくのだ。
岡田監督のマネジメント術でいうと、選手指導を徹底するのが特徴だ。「自主性でやらせています、というのは、今どきの選手が飛びつきそうな言葉ですよ。しかし、自主性ほど無責任なことはないと私は思っています。選手たちには、私の指導を受けるなら100%指導に従ってもらうように言っています。選手たちを徹底指導することが、私にとって責任ある指導法だと思っていますから」と岡田監督。選手たちをしっかりと管理することで、“雑草軍団”を「戦う組織」に変えていった。
今年7月に70歳を迎えた岡田監督だが、箱根への情熱は少しも衰えていない。そして、「長い距離をしっかり走る努力をすれば、箱根駅伝で勝てる可能性はあると思っています。これが、距離の短い出雲や全日本では難しい。選手の素質で走れてしまう部分が大きいので、拓殖大学の選手では勝てません。でも、箱根だけは勝てる要素があるんですよ」と胸を張る。しかも、今年の拓殖大学は岡田監督が就任以来「過去最高のチーム」だという。正月の箱根駅伝では、どんな戦いを見せてくれるのか。
高校時代に活躍できなかった選手が大学でその才能を開花させることもある。その陰には、指揮官たちの熱い情熱と組織にフィットしたマネジメント術があるのだ。
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